【完結】辛口バーテンダーの別の顔はワイルド御曹司
32.大切なあなたと
「マサさん眠いの?」
「ん。起きてる」
マサは短く答えて、腹減が減ってるんだとお腹を摩る。
「ちゃんとご飯は作ってあるよ」
道香は答えてから服を脱いで、そのまま洗濯機に放り込む。
鍋を火にかけると、焼いた方のハンバーグはレンジで温め直す。
キャミソールとショーツ姿の道香を、マサは後ろから抱きしめる。
「お前は強いな」
「誰かさんが過保護すぎて」
「なら守られてればいいのに」
「せっかく手に入れたのに遠巻きに眺めるだけなんてヤダよ」
「そうか」
マサは道香の首筋に噛むようなキスをすると、シャワーを借りたいと服を脱ぎ始める。
鍋の火を弱めて、マサからジャケットとベスト、ズボンを受け取ると、他は洗濯機に入れるように伝え、預かったスーツはクローゼットに掛けた。
道香は適当なTシャツとジャージを履くと、マサの着替えとバスタオルを用意して洗濯機に起き、温め直していたおかずに充分火が通ったのを確認するとガスを止めた。
部屋に戻ってお茶を飲んでいると、マサが着替えを済ませて髪をタオルで拭きながら部屋に戻ってきた。
「相変わらずお風呂早いね」
「道香が長いんだろ」
「そうかな」
すぐに食べるか確認すると、自分で用意するから道香もシャワーを浴びるようにとマサが立ち上がる。
「全部温め直したよ。シチューと煮込みハンバーグはコンロ、普通の焼きハンバーグはレンジの中。ビールはもう無いから、何か飲むなら棚の中に焼酎とウイスキーが有るよ」
グラスは適当に使って。道香はそう言うと下着の替えを取り出し、バスタオルを持って風呂場に向かう。
マサが皿がだいぶ片付いたなと片付けに気付いたように振り返るので、服を脱ぎながら今日であらかた終わったと答える。
道香は下着を脱いでネットに入れると、夜中だが洗濯機を回した。
マサが食事中に道香はシャワーを浴びる。首筋や胸元に噛まれたような赤い痕が残っている。先程付けられたものだ。髪の毛を洗い流し、トリートメントをしながら身体も洗い、髪と身体を濯ぐようにシャワーで泡を洗い流す。
髪の滴を絞るように落とすと、風呂場の扉を開けてバスタオルを取る。髪や身体を丁寧に拭くと、まだ乾ききらない髪の毛にバスタオルを巻きつけて着替えを済ませる。
部屋に戻ると夜中にも拘らずマサは電話中だった。途中、道香の名前が出たので相手は戸熊だろうか。
ドライヤーを使いたかったが、マサが電話を終えるまでバスタオルで滴を拭き取り、冷蔵庫からお茶をグラスに注ぐとそれを持ってソファーに座る。
時計は午前2時を指している。マサがつけたのだろうテレビは田園風景を映していた。
「ふう……」
電話が終わったらしく、マサは溜め息のように息を吐き出す。
「もしかして戸熊さん?」
「ああ」
「何か進展が?」
「芝田が舌を噛んで自殺を図ったらしい」
「え!」
「未遂だ。ピンピンして病院で発狂して騒いでるらしい」
「戸熊さんはなんて?」
「道香のことを気にしてた。とりあえずしばらく一緒に過ごすことは伝えてある」
マサは柔らかく微笑むと道香の髪を撫でる。
「もうドライヤー使って良いぞ。身体冷えるだろ」
手元の焼酎のお茶割りを飲んで、マサはハンバーグをつまんでいる。
道香はドレッサーの前に移動してドライヤーで髪を乾かした。時折振り返ると、マサは酒を飲みながら食事を続けている。根元をしっかりと乾かすと毛先は適当に風に当ててドライヤーを止める。髪をシュシュで結んでマサの隣に再び座る。
「本当は食べる元気もないんじゃないの」
「そうだな。でも食ったらうまいから」
マサはにっこり笑って道香を見ると、さすがに先に食べたよなと頭を撫でながら呟く。
「そうだね。あの時は待ってるのも馬鹿らしかったし、もう二度と顔合わせたくなかったから、やけ食いした」
「そうか」
「虚しい時間だったよ」
「すまん」
「なに謝ってんの。もう分かったから良いって」
マサにもたれかかると、道香は天井を見上げる。
全てはマサのストーカーだった芝田が裏で糸を引いていた。彼女がしばらく大人しかったのはマサのそばで仕事をしていたからか。
そういえばアウトレットでめぐみがマサに絡んだ時に芝田はそばにいた。その場を離れたように見せ掛けて、道香がマサの家に行くことを盗み聞きしていたのなら、千葉がその夜に襲ってきたのも肯ける。
戸熊が詳しく調べてくれていると言うが、彼女が自殺を図ったと言うなら、もう打つ手札が無くなったということだろうか。
「なんか考えてんのか」
煮込みハンバーグが気に入ったのか、何度も箸を運んでマサが道香を見ずに話し掛けてくる。
「いや、自殺を図ったって聞いて、もう打つ手が無いからそうしたのかなって」
「あの女のことか?」
「うん。もう手出しできないからそんなことしたんじゃないかな」
「だと良いんだが」
マサのグラスが空になったので、まだ飲むか尋ねる。もう少しと言うので、道香はグラスを手にソファーから立ち上がる。
「道香、済まないが木曜まで泊まらせてくれ」
「仕事は?」
洗濯物をカゴに移しながら道香は声だけ部屋に向ける。
「親父に今回のことを伝えてあるんだ。芝田の懲戒解雇の件があったからな。家に安全に道香を連れてくるまではそばにいて俺にも休めとさ」
「そうなんだね」
濃い目の焼酎お茶割りを差し出すと、洗濯物を部屋の中に干しながら、マサがいてくれるなら心強いけどもう安心な気がしてると、根拠はないが道香は呟いた。
「何もないならそれで良い」
そう吐き出すと、マサ思い出したように謝りたいことが有ると難しい顔をする。
「どうしたの?」
「オーナーが防犯のために店の中にカメラを仕掛けてた。証拠としてそれを出すように言われてる」
それはつまり道香が襲われた時の映像ということだろう。道香はマサの隣に座って構わないよと答える。
「マサさんが録音してた会話の裏付けになるだろうから。でも消去出来るなら消して欲しいデータではあるかな」
「ごめんな」
「マサさんは謝ってばっかり」
「全部俺のせいだからな」
「誰のせいでもない。全面的に向こうが悪くて、私たちは一方的に傷付けられただけ」
「でももっと動けたはずだ」
「時間は戻せない。考えても苦しいだけだから、先のことを考えようよ」
頬に手を添えると優しく撫でて、道香は毅然とした表情でマサを見た。
「ん。起きてる」
マサは短く答えて、腹減が減ってるんだとお腹を摩る。
「ちゃんとご飯は作ってあるよ」
道香は答えてから服を脱いで、そのまま洗濯機に放り込む。
鍋を火にかけると、焼いた方のハンバーグはレンジで温め直す。
キャミソールとショーツ姿の道香を、マサは後ろから抱きしめる。
「お前は強いな」
「誰かさんが過保護すぎて」
「なら守られてればいいのに」
「せっかく手に入れたのに遠巻きに眺めるだけなんてヤダよ」
「そうか」
マサは道香の首筋に噛むようなキスをすると、シャワーを借りたいと服を脱ぎ始める。
鍋の火を弱めて、マサからジャケットとベスト、ズボンを受け取ると、他は洗濯機に入れるように伝え、預かったスーツはクローゼットに掛けた。
道香は適当なTシャツとジャージを履くと、マサの着替えとバスタオルを用意して洗濯機に起き、温め直していたおかずに充分火が通ったのを確認するとガスを止めた。
部屋に戻ってお茶を飲んでいると、マサが着替えを済ませて髪をタオルで拭きながら部屋に戻ってきた。
「相変わらずお風呂早いね」
「道香が長いんだろ」
「そうかな」
すぐに食べるか確認すると、自分で用意するから道香もシャワーを浴びるようにとマサが立ち上がる。
「全部温め直したよ。シチューと煮込みハンバーグはコンロ、普通の焼きハンバーグはレンジの中。ビールはもう無いから、何か飲むなら棚の中に焼酎とウイスキーが有るよ」
グラスは適当に使って。道香はそう言うと下着の替えを取り出し、バスタオルを持って風呂場に向かう。
マサが皿がだいぶ片付いたなと片付けに気付いたように振り返るので、服を脱ぎながら今日であらかた終わったと答える。
道香は下着を脱いでネットに入れると、夜中だが洗濯機を回した。
マサが食事中に道香はシャワーを浴びる。首筋や胸元に噛まれたような赤い痕が残っている。先程付けられたものだ。髪の毛を洗い流し、トリートメントをしながら身体も洗い、髪と身体を濯ぐようにシャワーで泡を洗い流す。
髪の滴を絞るように落とすと、風呂場の扉を開けてバスタオルを取る。髪や身体を丁寧に拭くと、まだ乾ききらない髪の毛にバスタオルを巻きつけて着替えを済ませる。
部屋に戻ると夜中にも拘らずマサは電話中だった。途中、道香の名前が出たので相手は戸熊だろうか。
ドライヤーを使いたかったが、マサが電話を終えるまでバスタオルで滴を拭き取り、冷蔵庫からお茶をグラスに注ぐとそれを持ってソファーに座る。
時計は午前2時を指している。マサがつけたのだろうテレビは田園風景を映していた。
「ふう……」
電話が終わったらしく、マサは溜め息のように息を吐き出す。
「もしかして戸熊さん?」
「ああ」
「何か進展が?」
「芝田が舌を噛んで自殺を図ったらしい」
「え!」
「未遂だ。ピンピンして病院で発狂して騒いでるらしい」
「戸熊さんはなんて?」
「道香のことを気にしてた。とりあえずしばらく一緒に過ごすことは伝えてある」
マサは柔らかく微笑むと道香の髪を撫でる。
「もうドライヤー使って良いぞ。身体冷えるだろ」
手元の焼酎のお茶割りを飲んで、マサはハンバーグをつまんでいる。
道香はドレッサーの前に移動してドライヤーで髪を乾かした。時折振り返ると、マサは酒を飲みながら食事を続けている。根元をしっかりと乾かすと毛先は適当に風に当ててドライヤーを止める。髪をシュシュで結んでマサの隣に再び座る。
「本当は食べる元気もないんじゃないの」
「そうだな。でも食ったらうまいから」
マサはにっこり笑って道香を見ると、さすがに先に食べたよなと頭を撫でながら呟く。
「そうだね。あの時は待ってるのも馬鹿らしかったし、もう二度と顔合わせたくなかったから、やけ食いした」
「そうか」
「虚しい時間だったよ」
「すまん」
「なに謝ってんの。もう分かったから良いって」
マサにもたれかかると、道香は天井を見上げる。
全てはマサのストーカーだった芝田が裏で糸を引いていた。彼女がしばらく大人しかったのはマサのそばで仕事をしていたからか。
そういえばアウトレットでめぐみがマサに絡んだ時に芝田はそばにいた。その場を離れたように見せ掛けて、道香がマサの家に行くことを盗み聞きしていたのなら、千葉がその夜に襲ってきたのも肯ける。
戸熊が詳しく調べてくれていると言うが、彼女が自殺を図ったと言うなら、もう打つ手札が無くなったということだろうか。
「なんか考えてんのか」
煮込みハンバーグが気に入ったのか、何度も箸を運んでマサが道香を見ずに話し掛けてくる。
「いや、自殺を図ったって聞いて、もう打つ手が無いからそうしたのかなって」
「あの女のことか?」
「うん。もう手出しできないからそんなことしたんじゃないかな」
「だと良いんだが」
マサのグラスが空になったので、まだ飲むか尋ねる。もう少しと言うので、道香はグラスを手にソファーから立ち上がる。
「道香、済まないが木曜まで泊まらせてくれ」
「仕事は?」
洗濯物をカゴに移しながら道香は声だけ部屋に向ける。
「親父に今回のことを伝えてあるんだ。芝田の懲戒解雇の件があったからな。家に安全に道香を連れてくるまではそばにいて俺にも休めとさ」
「そうなんだね」
濃い目の焼酎お茶割りを差し出すと、洗濯物を部屋の中に干しながら、マサがいてくれるなら心強いけどもう安心な気がしてると、根拠はないが道香は呟いた。
「何もないならそれで良い」
そう吐き出すと、マサ思い出したように謝りたいことが有ると難しい顔をする。
「どうしたの?」
「オーナーが防犯のために店の中にカメラを仕掛けてた。証拠としてそれを出すように言われてる」
それはつまり道香が襲われた時の映像ということだろう。道香はマサの隣に座って構わないよと答える。
「マサさんが録音してた会話の裏付けになるだろうから。でも消去出来るなら消して欲しいデータではあるかな」
「ごめんな」
「マサさんは謝ってばっかり」
「全部俺のせいだからな」
「誰のせいでもない。全面的に向こうが悪くて、私たちは一方的に傷付けられただけ」
「でももっと動けたはずだ」
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