【完結】辛口バーテンダーの別の顔はワイルド御曹司
25.進み始める二人の時間
引っ越し業者の見積もりに訪れたのは依頼したとおり女性スタッフだった。
先に家具や家電の大半を処分する旨を伝えて、色分けしてマークした荷物と食器類、下駄箱に入った靴や、掃除機などの持ち出し分を申告していく。
ドレッサーの処分は正直まだ迷っているので、もしかしたらこれも持ち出すかも知れないと、家具が増える可能性を伝える。
「これくらいの量であれば、単身パックの一番お安いプランでお見積もりを出させていただけそうです」
担当スタッフの女性はそう言ってニッコリ笑うと、見積もり表に数字を書き込みながら何気なくご結婚ですか?と尋ねてくる。
「まあ、そんな感じです」
複雑な状況だが、道香は笑顔でスタッフに答える。
「退去後のお掃除代行サービスもございますが、そちらのご利用は良かったですか?」
掃除機のご処分も可能になりますよとスタッフの女性からにこやかに微笑まれ、なるほどその手があったかと道香は料金プランを確認する。
詳細を聞けば単身パックに少し追加するだけでサービスを受けられるらしいので、道香は遠慮せずに掃除代行を頼むことにした。
「では当日の作業開始時間ですが、午前中ですと11時の便が一番早いです。それ以降ですと、14時から一時間単位で16時まで対応可能です」
「じゃあ一番早い11時でお願いします」
「段ボール類のお届けは明日になります。午前中のお受け取りは可能ですか?」
「はい。大丈夫です」
諸々を確認し合うと、当日も私を含めた女性スタッフで担当するのでご安心くださいと爽やかな笑顔で挨拶をして帰って行った。
「なんか忘れてる?」
彼女を送り出して大切な何かを忘れている気がしてモヤモヤする。
布団や洗濯物を取り込むと、それがなんなのか思い出して道香は焦る。
「そうだ、退去の申請してなかった!」
大慌てで管理会社に電話をする。急な解約なので下手をすると来月末での解約になるかも知れない。
管理会社の担当曰く、道香は家賃の支払いが滞ったこともなく近隣トラブルが出たこともないので、急な解約だがイレギュラーで今月末で処理してくれる話でまとまった。
「あとは?水道ガス電気、あぁ固定電話とネットのプロバイダはどうなるんだろ」
色々と手続きが必要なことを思い出してバタバタと電話をかけて解約の連絡を済ませる。
他にも転出の届け出や郵便の転送申請など、やる事は山積みだ。
「引っ越しって想像以上に大変だな」
思いつく限りの問い合わせを終えると、倒れ込むようにソファーにもたれ、道香は脱力して溜め息を吐き出した。
お茶でも飲もうかと立ち上がって冷蔵庫を開けるタイミングでインターホンが鳴る。
「ん?なんかまだ今日依頼してたっけ」
道香は眉をひそめると、インターホンを覗くが人影が見えない。
急に怖くなって、物音を立てないように部屋に戻るとスマホが鳴る。マサからだ。
「もしもし?」
『言いつけ守って鍵開けないのは良いけど、玄関開けてくれるか』
「え?」
『今のインターホン俺』
「ごめん!モニターに映ってなかったから、今開けるよ」
通話したまま玄関に向かうと、鍵を開けてマサを通す。
「早かったね」
「何言ってんだ。もう18時半過ぎてるぞ」
スーツ姿のマサは鍵を閉めてドアロックを掛けると、靴を脱いで玄関に上がり道香をハグする。
「その様子じゃ、飯は今からだな」
「この部屋の退去申請とか、ライフラインの解約の問い合わせを完全に忘れててバタバタしてたの。ごめんね」
部屋に案内しながら謝る道香に、だからメッセージの既読がつかなかったんだなとマサは納得する。
「退去だから、そういう手続き必要だよな」
その辺りは自分とは勝手が違うのでマサも失念していたらしく、何の手続きをしたのか道香に確認する。
「うん。マサさんも自宅とはいえ、引っ越しの申請手続きは必要だからね」
道香はマサをソファーに座らせると、グラスに注いだお茶を出してキッチンスペースに戻ると、冷蔵庫を開けて夕飯をどうするか考える。
「マサさんお腹減ってるよね」
「食材減らしたかったからガッツリ食えるから」
そう言いながらマサが道香の元にやってくる。
「じゃあ昼の残りのスープに冷凍餃子を入れて水餃子みたいにしようかな。お肉も使いたいから生姜焼きとかどう?あ、お母さんの唐揚げもあるわ」
「米は?炊くのか」
「うん」
「何合炊ける?」
「三合かな」
「米も減らす方が良いんだろ。なら三合炊いて残ったら明日の朝に回せ」
「助かる。ありがとう」
「生姜焼き俺が作ろうか?道香もなんだかんだ疲れただろ?」
マサはネクタイを緩め、ジャケットとベストのボタンを外すと、ハンガー借りるぞと一旦部屋に戻る。
米びつから米を計り入れていると、腕捲りしたマサがキッチンスペースに戻ってきてシンクで手を洗うと、手を拭く物が欲しいと言って道香からキッチンペーパーを受け取る。
「料理の支度は俺がするから、道香はちょっと休んでな」
「えー悪いよ。マサさん仕事で疲れてるじゃん」
「良いよ。ここ狭いし二人じゃかさばるから手伝えないし、俺一人で作った方が早い」
マサは道香の頭を撫でると、座ってろと言って、夕飯作りを始めてしまう。
先に家具や家電の大半を処分する旨を伝えて、色分けしてマークした荷物と食器類、下駄箱に入った靴や、掃除機などの持ち出し分を申告していく。
ドレッサーの処分は正直まだ迷っているので、もしかしたらこれも持ち出すかも知れないと、家具が増える可能性を伝える。
「これくらいの量であれば、単身パックの一番お安いプランでお見積もりを出させていただけそうです」
担当スタッフの女性はそう言ってニッコリ笑うと、見積もり表に数字を書き込みながら何気なくご結婚ですか?と尋ねてくる。
「まあ、そんな感じです」
複雑な状況だが、道香は笑顔でスタッフに答える。
「退去後のお掃除代行サービスもございますが、そちらのご利用は良かったですか?」
掃除機のご処分も可能になりますよとスタッフの女性からにこやかに微笑まれ、なるほどその手があったかと道香は料金プランを確認する。
詳細を聞けば単身パックに少し追加するだけでサービスを受けられるらしいので、道香は遠慮せずに掃除代行を頼むことにした。
「では当日の作業開始時間ですが、午前中ですと11時の便が一番早いです。それ以降ですと、14時から一時間単位で16時まで対応可能です」
「じゃあ一番早い11時でお願いします」
「段ボール類のお届けは明日になります。午前中のお受け取りは可能ですか?」
「はい。大丈夫です」
諸々を確認し合うと、当日も私を含めた女性スタッフで担当するのでご安心くださいと爽やかな笑顔で挨拶をして帰って行った。
「なんか忘れてる?」
彼女を送り出して大切な何かを忘れている気がしてモヤモヤする。
布団や洗濯物を取り込むと、それがなんなのか思い出して道香は焦る。
「そうだ、退去の申請してなかった!」
大慌てで管理会社に電話をする。急な解約なので下手をすると来月末での解約になるかも知れない。
管理会社の担当曰く、道香は家賃の支払いが滞ったこともなく近隣トラブルが出たこともないので、急な解約だがイレギュラーで今月末で処理してくれる話でまとまった。
「あとは?水道ガス電気、あぁ固定電話とネットのプロバイダはどうなるんだろ」
色々と手続きが必要なことを思い出してバタバタと電話をかけて解約の連絡を済ませる。
他にも転出の届け出や郵便の転送申請など、やる事は山積みだ。
「引っ越しって想像以上に大変だな」
思いつく限りの問い合わせを終えると、倒れ込むようにソファーにもたれ、道香は脱力して溜め息を吐き出した。
お茶でも飲もうかと立ち上がって冷蔵庫を開けるタイミングでインターホンが鳴る。
「ん?なんかまだ今日依頼してたっけ」
道香は眉をひそめると、インターホンを覗くが人影が見えない。
急に怖くなって、物音を立てないように部屋に戻るとスマホが鳴る。マサからだ。
「もしもし?」
『言いつけ守って鍵開けないのは良いけど、玄関開けてくれるか』
「え?」
『今のインターホン俺』
「ごめん!モニターに映ってなかったから、今開けるよ」
通話したまま玄関に向かうと、鍵を開けてマサを通す。
「早かったね」
「何言ってんだ。もう18時半過ぎてるぞ」
スーツ姿のマサは鍵を閉めてドアロックを掛けると、靴を脱いで玄関に上がり道香をハグする。
「その様子じゃ、飯は今からだな」
「この部屋の退去申請とか、ライフラインの解約の問い合わせを完全に忘れててバタバタしてたの。ごめんね」
部屋に案内しながら謝る道香に、だからメッセージの既読がつかなかったんだなとマサは納得する。
「退去だから、そういう手続き必要だよな」
その辺りは自分とは勝手が違うのでマサも失念していたらしく、何の手続きをしたのか道香に確認する。
「うん。マサさんも自宅とはいえ、引っ越しの申請手続きは必要だからね」
道香はマサをソファーに座らせると、グラスに注いだお茶を出してキッチンスペースに戻ると、冷蔵庫を開けて夕飯をどうするか考える。
「マサさんお腹減ってるよね」
「食材減らしたかったからガッツリ食えるから」
そう言いながらマサが道香の元にやってくる。
「じゃあ昼の残りのスープに冷凍餃子を入れて水餃子みたいにしようかな。お肉も使いたいから生姜焼きとかどう?あ、お母さんの唐揚げもあるわ」
「米は?炊くのか」
「うん」
「何合炊ける?」
「三合かな」
「米も減らす方が良いんだろ。なら三合炊いて残ったら明日の朝に回せ」
「助かる。ありがとう」
「生姜焼き俺が作ろうか?道香もなんだかんだ疲れただろ?」
マサはネクタイを緩め、ジャケットとベストのボタンを外すと、ハンガー借りるぞと一旦部屋に戻る。
米びつから米を計り入れていると、腕捲りしたマサがキッチンスペースに戻ってきてシンクで手を洗うと、手を拭く物が欲しいと言って道香からキッチンペーパーを受け取る。
「料理の支度は俺がするから、道香はちょっと休んでな」
「えー悪いよ。マサさん仕事で疲れてるじゃん」
「良いよ。ここ狭いし二人じゃかさばるから手伝えないし、俺一人で作った方が早い」
マサは道香の頭を撫でると、座ってろと言って、夕飯作りを始めてしまう。
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