【コミカライズ原作】君とは二度、恋に落ちる〜初めましての彼に溺愛される理由〜
惹かれる心と体(4)
「……花梨が俺といてくれるんだったら、何でもいいと思ったんだけど」
「どういう意味……?」
「ううん、ごめん。独り言」
明らかに独り言としては無理があるような台詞を残して、奏のしなやかな指が私の顎をとらえる。そのままゆっくりと触れるだけの口づけを交わした後、もう二度三度、ついばむように唇が重なった。
吸いついては離れ、どこかお預けされているようなキスに物足りなさを感じて、自ら唇を押しあてる。奏は一瞬驚いたような顔をしたけれど、口角を上げて「煽ってる?」と私を覗き込んだ。
「……ちょっとだけ」
「本当にちょっと? 俺には、かなりに思えたんだけど」
「だって、明日も早いし……」
「明日に支障をきたすようなこと、期待してるの?」
「っ、……意地悪」
悔しくてそっぽを向いてみれば、焦ったように「ごめんごめん」と奏が笑う。もう一度私を腕の中に閉じ込めると、耳元で低い声で囁いた。
「明日ちゃんと起こしてあげるから、しよ」
「ひぁっ……」
奏の唇は囁くだけでは満足できなかったのか、そのまま耳たぶをパクリと口に含んだ。舌先で弄ぶと、わざとらしく息を吹きかけて離れていく。
「で、でも……」
「大丈夫。実は俺も明日早いんだ。だから無理はさせないよ」
「早いって……仕事で?」
「うん。夕方クライアントから連絡があって、急遽明日の朝東京に行くことになったんだ」
「え!? 何で、そんな大事なこと言ってくれないの!?」
いくら知らなかったとはいえ、飲みに誘った上に、こんな遅くまで拘束してしまうなんて。けれど奏は、まったく気にしていないように首を振った。
「言ったら花梨は気を使うと思って。俺もみなみちゃんに会ってみたかったし、楽しかったから気にしないで」
「ごめんね……。でも、それなら今日はもう寝――っ……」
言いかけたところで、また体を引き寄せられる。先ほどよりも体が密着し、全身に奏を感じた。
「俺はもっと花梨に触れたい。それに……このままじゃ眠れそうもないし」
薄いパジャマ越しに、彼の迸る熱を感じて体の奥が疼く。私だって、この高揚した気持ちのまま眠れる気はしなかった。
「ダメ?」
もう一度耳元で、甘えるように奏が囁く。そんなこと言われたら、ノーと言う選択肢なんてどこにもないじゃない。
「……ちゃんと、起こしてくれる?」
返事の代わりにそう尋ねてみると、奏は嬉しそうに「了解」と笑う。
向かい合う形になって、ベッドになだれ込むと、スプリングの軋む音が響き渡る。シングルベッドは二人で並んで眠るには小さくて、だけどこうして抱き合っている分には十分な広さに感じられた。
互いの熱を注ぎ込むように、深いところで熱い舌が絡みつく。息継ぎを忘れてしまうほどの長いキスのあと、彼の手が服の中へと侵入した。
パジャマの下は下着だけ。いとも簡単にふくらみまで到達すると、すぐに後ろに回った手でホックを外される。締め付けがなくなり、ふるりと揺れた胸に、奏が弄ぶように触れた。まるで、柔らかな玩具で遊ぶ子供のように。
「ふっ、あっ……」
こらえきれず、吐息と共に甘美な声が漏れる。
「我慢しなくていいよ。花梨の声、可愛いから」
「やぁ……」
我慢、したくてしてるわけじゃない。触れられる度に、自分のものとも思えない声が漏れるから、羞恥心でおかしくなるのだ。
「もっと感じてるとこ、見せて」
甘く、優しい眼差しで。そんな風に言われたら、嫌なんて言えない。ここまできて言う理由もないのだけれど。
とめどなく注がれる愛に身を捩りながら、彼の心地良い香りに包まれて、そっと目を閉じた。
十分に愛し合ったあと、私たちは裸のままベッドに沈み込んだ。
明日のことを思ってなのか、それとも彼の性格なのか。奏はまた優しく抱いてくれたけれど、私の体には快楽の余韻が重く残った。
それでも、初めて奏に抱かれた時と比べ物にならないくらい心は満たされていて。自分が思っている以上に彼に惹かれているんだということに、改めて気付かされた。
「……幸せ。花梨をこうして抱いていられるなんて」
私を腕に抱きながら、しみじみと幸せを嚙みしめるかのように、奏が呟く。
「お、大げさだよ」
「そんなことない。ずっと、こうしたかったから」
また、聞き覚えのある台詞。まるで、ここ数週間の話ではなく、随分と前からそう思っていたかのように。
奏はたまに、不思議なことを言う。それも彼が言う、ずっと前から私を知っているような不思議な感覚のせいなのだろうか。
「ねえ……」
「あのさ……」
互いに何かを言いかけて、被ってしまったことに笑い合う。
そして「お先にどうぞ」なんてお決まりのやりとりをしているうちに、もうすっかり夜が深まっていたことに気付いた。いや、気付かないふりをしていて現実に引き戻された、というのが正しいかもしれない。
「さすがに寝ようか」
「うん、そうだね。明日、起きれるかな?」
「大丈夫。俺、朝は強いから。花梨はぐっすり眠ってて」
そう言って、触れているかもわからないくらい、優しいキスが額に落とされる。
「うん、じゃあ……おやすみ」
「おやすみ」
温かな腕に包まれて、次第に深い眠りへと誘われていく。奏が今、何を言おうとしたのかも知る由もなく。
誠と同じ懐かしい香りは、いつの間にか消えていた。
「どういう意味……?」
「ううん、ごめん。独り言」
明らかに独り言としては無理があるような台詞を残して、奏のしなやかな指が私の顎をとらえる。そのままゆっくりと触れるだけの口づけを交わした後、もう二度三度、ついばむように唇が重なった。
吸いついては離れ、どこかお預けされているようなキスに物足りなさを感じて、自ら唇を押しあてる。奏は一瞬驚いたような顔をしたけれど、口角を上げて「煽ってる?」と私を覗き込んだ。
「……ちょっとだけ」
「本当にちょっと? 俺には、かなりに思えたんだけど」
「だって、明日も早いし……」
「明日に支障をきたすようなこと、期待してるの?」
「っ、……意地悪」
悔しくてそっぽを向いてみれば、焦ったように「ごめんごめん」と奏が笑う。もう一度私を腕の中に閉じ込めると、耳元で低い声で囁いた。
「明日ちゃんと起こしてあげるから、しよ」
「ひぁっ……」
奏の唇は囁くだけでは満足できなかったのか、そのまま耳たぶをパクリと口に含んだ。舌先で弄ぶと、わざとらしく息を吹きかけて離れていく。
「で、でも……」
「大丈夫。実は俺も明日早いんだ。だから無理はさせないよ」
「早いって……仕事で?」
「うん。夕方クライアントから連絡があって、急遽明日の朝東京に行くことになったんだ」
「え!? 何で、そんな大事なこと言ってくれないの!?」
いくら知らなかったとはいえ、飲みに誘った上に、こんな遅くまで拘束してしまうなんて。けれど奏は、まったく気にしていないように首を振った。
「言ったら花梨は気を使うと思って。俺もみなみちゃんに会ってみたかったし、楽しかったから気にしないで」
「ごめんね……。でも、それなら今日はもう寝――っ……」
言いかけたところで、また体を引き寄せられる。先ほどよりも体が密着し、全身に奏を感じた。
「俺はもっと花梨に触れたい。それに……このままじゃ眠れそうもないし」
薄いパジャマ越しに、彼の迸る熱を感じて体の奥が疼く。私だって、この高揚した気持ちのまま眠れる気はしなかった。
「ダメ?」
もう一度耳元で、甘えるように奏が囁く。そんなこと言われたら、ノーと言う選択肢なんてどこにもないじゃない。
「……ちゃんと、起こしてくれる?」
返事の代わりにそう尋ねてみると、奏は嬉しそうに「了解」と笑う。
向かい合う形になって、ベッドになだれ込むと、スプリングの軋む音が響き渡る。シングルベッドは二人で並んで眠るには小さくて、だけどこうして抱き合っている分には十分な広さに感じられた。
互いの熱を注ぎ込むように、深いところで熱い舌が絡みつく。息継ぎを忘れてしまうほどの長いキスのあと、彼の手が服の中へと侵入した。
パジャマの下は下着だけ。いとも簡単にふくらみまで到達すると、すぐに後ろに回った手でホックを外される。締め付けがなくなり、ふるりと揺れた胸に、奏が弄ぶように触れた。まるで、柔らかな玩具で遊ぶ子供のように。
「ふっ、あっ……」
こらえきれず、吐息と共に甘美な声が漏れる。
「我慢しなくていいよ。花梨の声、可愛いから」
「やぁ……」
我慢、したくてしてるわけじゃない。触れられる度に、自分のものとも思えない声が漏れるから、羞恥心でおかしくなるのだ。
「もっと感じてるとこ、見せて」
甘く、優しい眼差しで。そんな風に言われたら、嫌なんて言えない。ここまできて言う理由もないのだけれど。
とめどなく注がれる愛に身を捩りながら、彼の心地良い香りに包まれて、そっと目を閉じた。
十分に愛し合ったあと、私たちは裸のままベッドに沈み込んだ。
明日のことを思ってなのか、それとも彼の性格なのか。奏はまた優しく抱いてくれたけれど、私の体には快楽の余韻が重く残った。
それでも、初めて奏に抱かれた時と比べ物にならないくらい心は満たされていて。自分が思っている以上に彼に惹かれているんだということに、改めて気付かされた。
「……幸せ。花梨をこうして抱いていられるなんて」
私を腕に抱きながら、しみじみと幸せを嚙みしめるかのように、奏が呟く。
「お、大げさだよ」
「そんなことない。ずっと、こうしたかったから」
また、聞き覚えのある台詞。まるで、ここ数週間の話ではなく、随分と前からそう思っていたかのように。
奏はたまに、不思議なことを言う。それも彼が言う、ずっと前から私を知っているような不思議な感覚のせいなのだろうか。
「ねえ……」
「あのさ……」
互いに何かを言いかけて、被ってしまったことに笑い合う。
そして「お先にどうぞ」なんてお決まりのやりとりをしているうちに、もうすっかり夜が深まっていたことに気付いた。いや、気付かないふりをしていて現実に引き戻された、というのが正しいかもしれない。
「さすがに寝ようか」
「うん、そうだね。明日、起きれるかな?」
「大丈夫。俺、朝は強いから。花梨はぐっすり眠ってて」
そう言って、触れているかもわからないくらい、優しいキスが額に落とされる。
「うん、じゃあ……おやすみ」
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