【コミカライズ原作】君とは二度、恋に落ちる〜初めましての彼に溺愛される理由〜
惹かれる心と体(1)
「……ねえ、騙されてない? 大丈夫?」
今日は月一のみなみとの飲み会の日。仕事終わりいつもの居酒屋で、彼女は訝し気な表情で首を傾げた。
「え?」
「え? じゃないよ。出会って、やっちゃって? 付き合ったと思ったら、いきなり引っ越してきた? いやいや、展開早すぎでしょ。そんなことある?」
「ええと…………やっぱり?」
「それに、花梨のこと好きすぎるのも気になる。まだ出会ってそんなに経ってないのに」
先日のドライブの後、帰宅してからの情事を想像していたのだが、奏はあっさりと私を家に帰した。どこかで期待していただけに拍子抜けしてしまったが、以前「体目的だと思われたくない」と言った彼のプライドだったのかもしれない。
おかげで大事にされているという実感が湧き、彼への不信感もかなり払拭されたというのに……。みなみの一言によって、また振り出しに戻ってしまった。やはり、第三者が聞いても、奏は怪しいというのだろうか。
「私も最初は怪しいなとは思ったんだよ? でも、理由がわからなくて……。だって私、騙すような価値ある?」
「騙すって言ったら……やっぱお金? 社長なわけだし」
「社長っていうほど稼いでないよ? それを言ったら、向こうの方が稼いでそうだし……」
いや、聞かなくても分かる。絶対に奏の方が私より稼いでいる。それは彼の仕事ぶりからも、簡単に引っ越してきてしまう辺りからも安易に想像ができた。
「それなら体目当てとか?」
「それも考えたけど、さすがに違うと思う。付き合ってから、そういうこと何もないし……」
キスは『そういうこと』に含まれないのか、というのは黙っておこう。そもそもキスだって、つい最近までしなかったのだから、やっぱり体目的ってことはないと思う。唇以外にはされていたけれど……。
「まず私よりも美人でスタイルが良い人なんて、東京にゴロゴロいるだろうし、相手には困らなさそうだよ」
「うーん。じゃあ、何か過去に恨みを持たれるようなことをしたとか」
「私が?」
「……いや、それはないか。花梨、人畜無害だし」
それが誉め言葉なのか悪口なのかは、一旦おいておいて。だとすれば、一体どうして私なのだろうか。二人して眉を寄せて考え込んで、みなみがおもむろに口を開いた。
「ねえ……その人、ストーカーじゃないよね?」
「え!? ストーカー!?」
「なんとなく。同じマンションにまで引っ越してきちゃうし、なんか、花梨に執着してるような気がして……」
「さ、さすがにないと思うよ? そんな気質、まったく感じられないし」
「本当に? 部屋入ったら、自分の写真だらけでした~なんてベタなことない?」
「ないない! そんな怖いこと言わないでよ……!」
慌てて否定しても、みなみはひどく怪しんでいる様子。今までまったく接点がなかったのだからなどと説明すると、「だから怪しんだよ」と、さらに追い打ちをかけられた。
「私だってまだ半信半疑なところはあるけど……でも悪い人には思えないよ」
数週間、奏と付き合ってみてわかったこと。普段は調子が良くて、甘い言葉も次から次へと吐いてしまうような人だが、決して上辺だけの言葉だけではない。ちゃんと考えて、本心で言ってくれている。彼はそこまで適当な人間ではないと思うから。言い切った私を見て、みなみは諦めたようにため息をついた。
「花梨がそこまで言うなら、わかった。好きなのね、その人のこと」
「好きっていうか……」
惹かれている、確実に。奏への気持ちが日に日に大きくなるのは、自分でも感じていた。だけど、なんとなく「好き」という簡単な言葉だけでは説明しきれず、口ごもる。
みなみは敢えて深く追及はせずに、言葉を続けた。
「私としてもせっかく花梨が恋愛する気になったなら、とやかく言いたくはないんだけどさ。傷ついてはほしくないの」
「う、うん?」
「こうなったら私が見極めてあげるから、今度直接会わせてよ。どちらにしろ、花梨の保護者としては会っておかないと」
「保護者って、大げさだな~」
「笑い事じゃないから! いいね? じゃないと私が安心できない」
「は、はい……」
みなみなりに本気で私を心配してくれていることも伝わってくるし、私としても第三者として彼女の意見をもらえるのはすごく助かる。
早速奏に連絡を入れようとスマートフォンを開くと、見計らったようにちょうど彼から連絡が入った。
今日は月一のみなみとの飲み会の日。仕事終わりいつもの居酒屋で、彼女は訝し気な表情で首を傾げた。
「え?」
「え? じゃないよ。出会って、やっちゃって? 付き合ったと思ったら、いきなり引っ越してきた? いやいや、展開早すぎでしょ。そんなことある?」
「ええと…………やっぱり?」
「それに、花梨のこと好きすぎるのも気になる。まだ出会ってそんなに経ってないのに」
先日のドライブの後、帰宅してからの情事を想像していたのだが、奏はあっさりと私を家に帰した。どこかで期待していただけに拍子抜けしてしまったが、以前「体目的だと思われたくない」と言った彼のプライドだったのかもしれない。
おかげで大事にされているという実感が湧き、彼への不信感もかなり払拭されたというのに……。みなみの一言によって、また振り出しに戻ってしまった。やはり、第三者が聞いても、奏は怪しいというのだろうか。
「私も最初は怪しいなとは思ったんだよ? でも、理由がわからなくて……。だって私、騙すような価値ある?」
「騙すって言ったら……やっぱお金? 社長なわけだし」
「社長っていうほど稼いでないよ? それを言ったら、向こうの方が稼いでそうだし……」
いや、聞かなくても分かる。絶対に奏の方が私より稼いでいる。それは彼の仕事ぶりからも、簡単に引っ越してきてしまう辺りからも安易に想像ができた。
「それなら体目当てとか?」
「それも考えたけど、さすがに違うと思う。付き合ってから、そういうこと何もないし……」
キスは『そういうこと』に含まれないのか、というのは黙っておこう。そもそもキスだって、つい最近までしなかったのだから、やっぱり体目的ってことはないと思う。唇以外にはされていたけれど……。
「まず私よりも美人でスタイルが良い人なんて、東京にゴロゴロいるだろうし、相手には困らなさそうだよ」
「うーん。じゃあ、何か過去に恨みを持たれるようなことをしたとか」
「私が?」
「……いや、それはないか。花梨、人畜無害だし」
それが誉め言葉なのか悪口なのかは、一旦おいておいて。だとすれば、一体どうして私なのだろうか。二人して眉を寄せて考え込んで、みなみがおもむろに口を開いた。
「ねえ……その人、ストーカーじゃないよね?」
「え!? ストーカー!?」
「なんとなく。同じマンションにまで引っ越してきちゃうし、なんか、花梨に執着してるような気がして……」
「さ、さすがにないと思うよ? そんな気質、まったく感じられないし」
「本当に? 部屋入ったら、自分の写真だらけでした~なんてベタなことない?」
「ないない! そんな怖いこと言わないでよ……!」
慌てて否定しても、みなみはひどく怪しんでいる様子。今までまったく接点がなかったのだからなどと説明すると、「だから怪しんだよ」と、さらに追い打ちをかけられた。
「私だってまだ半信半疑なところはあるけど……でも悪い人には思えないよ」
数週間、奏と付き合ってみてわかったこと。普段は調子が良くて、甘い言葉も次から次へと吐いてしまうような人だが、決して上辺だけの言葉だけではない。ちゃんと考えて、本心で言ってくれている。彼はそこまで適当な人間ではないと思うから。言い切った私を見て、みなみは諦めたようにため息をついた。
「花梨がそこまで言うなら、わかった。好きなのね、その人のこと」
「好きっていうか……」
惹かれている、確実に。奏への気持ちが日に日に大きくなるのは、自分でも感じていた。だけど、なんとなく「好き」という簡単な言葉だけでは説明しきれず、口ごもる。
みなみは敢えて深く追及はせずに、言葉を続けた。
「私としてもせっかく花梨が恋愛する気になったなら、とやかく言いたくはないんだけどさ。傷ついてはほしくないの」
「う、うん?」
「こうなったら私が見極めてあげるから、今度直接会わせてよ。どちらにしろ、花梨の保護者としては会っておかないと」
「保護者って、大げさだな~」
「笑い事じゃないから! いいね? じゃないと私が安心できない」
「は、はい……」
みなみなりに本気で私を心配してくれていることも伝わってくるし、私としても第三者として彼女の意見をもらえるのはすごく助かる。
早速奏に連絡を入れようとスマートフォンを開くと、見計らったようにちょうど彼から連絡が入った。
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