【コミカライズ原作】君とは二度、恋に落ちる〜初めましての彼に溺愛される理由〜
二度目の恋は甘くて甘い(2)
その日、仕事を終えたのは夜の九時頃。念のため小鳥谷さんに連絡を入れてみると、家に来ないかという連絡があったので、一度自分の家に荷物を置いた後で彼の家を訪れた。
なんと、彼が引っ越してきた家というのが、なんと私と同じマンション内。いくら田舎で賃貸物件が少ないからと言って、これは確実に狙ったはず。おかげで会いに行きやすい距離だが、近すぎるのもどうなのだろうか。
三階の私の部屋から、五階の小鳥谷さんの部屋まで上がると、玄関先で彼が出迎えてくれた。
「おかえり。今日もお疲れ様」
真っ白なロンTをゆるっと着こなして、とてもラフな格好。まさに彼氏感溢れる雰囲気がなぜか生々しくて、妙な感じだ。
付き合ってから会話といえば電話が当たり前で、こうやって久しぶりに彼を目の前にすると、改めて破壊力が半端ないというか……。なんだか直視できない。仮にも付き合っているというのに、おかしな話だけれど。
それにしても――
「ねえ、ちょっと目が赤いよ? 大丈夫?」
いつもの笑顔で迎えてくれた小鳥谷さんの瞳は、ひどく充血しているようで心配になる。だけど私の心配をよそに、彼は首を横に振った。
「ちょっと仕事しすぎたかな。休めば良くなるから」
「ふふ、小鳥谷さんも働きすぎ」
「たしかに。これじゃ花梨のこと言えないな」
小鳥谷さんも、こんな時間まで仕事をしていたのだろうか。フリーとはいえど、いや、だからこそ仕事がたくさんあるのかもしれない。
ここ数週間で分かったことは、小鳥谷さんは私が思っている以上に仕事への熱が高い。それは、彼が仕事に費やしてる時間や、仕事の話をするときの口調から、想像することができた。
私自身も仕事は大切だから、そんなところは共感できるし気が合うなと思う。それでも、こうして働き過ぎている様子を見ると、心配になるけれど。
「そうだ。ご飯できてるから、どうぞ」
「お、お邪魔します……」
ご飯を食べていないと言ったのが、つい三十分前。それなら作るよと言ってくれたのだが、一体何を作ってくれたのだろうか。
部屋に入ると、テーブルの上によく見慣れた料理が並んでいるのが見えた。赤いご飯の上にふるふるの黄色の塊をのせて、柄にもなくハートマークまで描かれている。
「オムライス……!」
他にも色とりどりのサラダと、ポタージュまで付いていた。仕事終わりに、こんなバランスの良い食事を食べるのはいつぶりだろうか。
「オムライス好きだよね? それと、たまにはちゃんと手料理も食べないと」
「うう、ありがとう……」
ご飯の上の卵が、早く食べてくれと言わんばかりに震えている気がする。だけどそれよりも、ひとつ気がかりなことがあって小鳥谷さんを見た。
「あれ、私オムライス好きって話したっけ……?」
「え? ……ああ、前に電話で言ってなかった?」
好きな食べ物の話なんてした記憶はない。それに……。
「どうして私が普段料理しないこと知ってるの?」
一人暮らしの女性で料理が壊滅的だなんて、マイナスポイントは自ら口にはしないはず。疑問に思ったけれど、彼は特に気にした様子もなく口を開いた。
「ごめん、それはなんとなく。花梨って料理しなさそうだったから。違った?」
「っ、違わないです……」
こうも女性らしく見られていないというのか。まあその通りではあるのだが、なんだか悲しくなる。そんな気持ちを汲んでくれたのか、小鳥谷さんは慌てたように否定した。
「あ、違うよ。ごめん、悪い意味じゃないからね? 花梨は仕事頑張ってるんだから、気にしなくていいよ」
「でも、仕事してるのは小鳥谷さんも変わらないよ?」
「俺の仕事は時間の融通もきくし、もともと料理は好きだから。そうだ。花梨が食べたいもの、リクエストあったら何でも言ってね」
料理が好きだなんて羨ましい……。
見習うべきところがあるなと思いつつ、手を合わせると、さっそくオムライスを口に入れた。
「……ん! 美味しい!」
中身は本格的なチキンライスで、卵はスプーンを入れるととろりと溶けだす絶妙な半熟。本当に小鳥谷さんが作ったのだろうか、と思ってしまうほど。お店でも出せそうなレベルだ。電話で料理はそこそこするとは言っていたが、まさかここまでとは。
「卵とろとろ!」
昔ながらの硬めなのも好きだけど、このふわとろ感が一番幸せに感じる。
「よかった口に合って」
顔も良くて、仕事もできて、料理もできるだなんて、彼は一体何者なのだろう。少なくとも、こんな田舎のしがないアラサー女(一応社長だけど)には、もったいない気がする。
まさか、騙されていたりする……? いや、何の為に。それか体目的とか!?
実際に私たちは、付き合う前に関係を持ってしまっているわけだし。でも、わざわざ私を選ばなくてもいいような……。
「……何か、難しいこと考えてる?」
「えっ、ええと」
「あ、もしかしてできる彼氏だなとか思ってくれてたり?」
あたらずと雖も遠からず。ニュアンスが似ていたので頷くと、小鳥谷さんはコロコロと嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「もっと俺のいいとこ見つけて、どんどん好きになってもらわないとな」
「それは、おいおい……」
「あ、じゃあさ、今度デートしようよ」
「デート?」
「うん。俺の運転でドライブするって約束したでしょ?」
言われて、一緒に出掛けた日のことを思い出す。決してあの場のノリや社交辞令ではなくて、本当に叶えるつもりで言ってくれていたのだ。
小鳥谷さんは普通に話していると、調子が良いような少し軽い印象を受けることがあるけれど、適当なことは言わない人なのだと感じた。
「……また何か考えてる?」
「な、なんでもない!」
それと、人の考えていることを当てるのが得意らしい。
今の気持ちを言葉にしたら調子に乗ってしまいそうなので、平然を装いつつ食事を再開した。
なんと、彼が引っ越してきた家というのが、なんと私と同じマンション内。いくら田舎で賃貸物件が少ないからと言って、これは確実に狙ったはず。おかげで会いに行きやすい距離だが、近すぎるのもどうなのだろうか。
三階の私の部屋から、五階の小鳥谷さんの部屋まで上がると、玄関先で彼が出迎えてくれた。
「おかえり。今日もお疲れ様」
真っ白なロンTをゆるっと着こなして、とてもラフな格好。まさに彼氏感溢れる雰囲気がなぜか生々しくて、妙な感じだ。
付き合ってから会話といえば電話が当たり前で、こうやって久しぶりに彼を目の前にすると、改めて破壊力が半端ないというか……。なんだか直視できない。仮にも付き合っているというのに、おかしな話だけれど。
それにしても――
「ねえ、ちょっと目が赤いよ? 大丈夫?」
いつもの笑顔で迎えてくれた小鳥谷さんの瞳は、ひどく充血しているようで心配になる。だけど私の心配をよそに、彼は首を横に振った。
「ちょっと仕事しすぎたかな。休めば良くなるから」
「ふふ、小鳥谷さんも働きすぎ」
「たしかに。これじゃ花梨のこと言えないな」
小鳥谷さんも、こんな時間まで仕事をしていたのだろうか。フリーとはいえど、いや、だからこそ仕事がたくさんあるのかもしれない。
ここ数週間で分かったことは、小鳥谷さんは私が思っている以上に仕事への熱が高い。それは、彼が仕事に費やしてる時間や、仕事の話をするときの口調から、想像することができた。
私自身も仕事は大切だから、そんなところは共感できるし気が合うなと思う。それでも、こうして働き過ぎている様子を見ると、心配になるけれど。
「そうだ。ご飯できてるから、どうぞ」
「お、お邪魔します……」
ご飯を食べていないと言ったのが、つい三十分前。それなら作るよと言ってくれたのだが、一体何を作ってくれたのだろうか。
部屋に入ると、テーブルの上によく見慣れた料理が並んでいるのが見えた。赤いご飯の上にふるふるの黄色の塊をのせて、柄にもなくハートマークまで描かれている。
「オムライス……!」
他にも色とりどりのサラダと、ポタージュまで付いていた。仕事終わりに、こんなバランスの良い食事を食べるのはいつぶりだろうか。
「オムライス好きだよね? それと、たまにはちゃんと手料理も食べないと」
「うう、ありがとう……」
ご飯の上の卵が、早く食べてくれと言わんばかりに震えている気がする。だけどそれよりも、ひとつ気がかりなことがあって小鳥谷さんを見た。
「あれ、私オムライス好きって話したっけ……?」
「え? ……ああ、前に電話で言ってなかった?」
好きな食べ物の話なんてした記憶はない。それに……。
「どうして私が普段料理しないこと知ってるの?」
一人暮らしの女性で料理が壊滅的だなんて、マイナスポイントは自ら口にはしないはず。疑問に思ったけれど、彼は特に気にした様子もなく口を開いた。
「ごめん、それはなんとなく。花梨って料理しなさそうだったから。違った?」
「っ、違わないです……」
こうも女性らしく見られていないというのか。まあその通りではあるのだが、なんだか悲しくなる。そんな気持ちを汲んでくれたのか、小鳥谷さんは慌てたように否定した。
「あ、違うよ。ごめん、悪い意味じゃないからね? 花梨は仕事頑張ってるんだから、気にしなくていいよ」
「でも、仕事してるのは小鳥谷さんも変わらないよ?」
「俺の仕事は時間の融通もきくし、もともと料理は好きだから。そうだ。花梨が食べたいもの、リクエストあったら何でも言ってね」
料理が好きだなんて羨ましい……。
見習うべきところがあるなと思いつつ、手を合わせると、さっそくオムライスを口に入れた。
「……ん! 美味しい!」
中身は本格的なチキンライスで、卵はスプーンを入れるととろりと溶けだす絶妙な半熟。本当に小鳥谷さんが作ったのだろうか、と思ってしまうほど。お店でも出せそうなレベルだ。電話で料理はそこそこするとは言っていたが、まさかここまでとは。
「卵とろとろ!」
昔ながらの硬めなのも好きだけど、このふわとろ感が一番幸せに感じる。
「よかった口に合って」
顔も良くて、仕事もできて、料理もできるだなんて、彼は一体何者なのだろう。少なくとも、こんな田舎のしがないアラサー女(一応社長だけど)には、もったいない気がする。
まさか、騙されていたりする……? いや、何の為に。それか体目的とか!?
実際に私たちは、付き合う前に関係を持ってしまっているわけだし。でも、わざわざ私を選ばなくてもいいような……。
「……何か、難しいこと考えてる?」
「えっ、ええと」
「あ、もしかしてできる彼氏だなとか思ってくれてたり?」
あたらずと雖も遠からず。ニュアンスが似ていたので頷くと、小鳥谷さんはコロコロと嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「もっと俺のいいとこ見つけて、どんどん好きになってもらわないとな」
「それは、おいおい……」
「あ、じゃあさ、今度デートしようよ」
「デート?」
「うん。俺の運転でドライブするって約束したでしょ?」
言われて、一緒に出掛けた日のことを思い出す。決してあの場のノリや社交辞令ではなくて、本当に叶えるつもりで言ってくれていたのだ。
小鳥谷さんは普通に話していると、調子が良いような少し軽い印象を受けることがあるけれど、適当なことは言わない人なのだと感じた。
「……また何か考えてる?」
「な、なんでもない!」
それと、人の考えていることを当てるのが得意らしい。
今の気持ちを言葉にしたら調子に乗ってしまいそうなので、平然を装いつつ食事を再開した。
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