【コミカライズ原作】君とは二度、恋に落ちる〜初めましての彼に溺愛される理由〜
ハンカチと告白(1)
その日の午後。昨夜のことが脳裏に焼き付いて、正常でいられなくなった私は、耐え切れずみなみへ連絡をした。彼女もちょうど暇だと言うので、近くのカフェで落ち合うことに。
みなみは私の話を興味津々に聞いたあとで、未だ信じられないといったようにしみじみと頷いた。
「いやあ、あの花梨が……知らないうちに大人になってたんだね」
「あの花梨ってなに!?」
「だってこの間まで『恋愛はしない! 仕事!』だの豪語してて」
「う……」
「恋愛経験も誠としかない、妖精さんみたいなもんだし」
妖精さんはちょっと言い過ぎな気もする。セカンドバージンだったとはいえ、一応、経験はあるわけだし……。
「それなのに突然、シティーボーイとアバンチュールだなんて」
「ねえ、言い方!? どこのおばちゃん!?」
「あ〜私もその人見てみた~い。どんだけイケメンなの?」
みなみは完全に面白がっている。幼馴染の初めて聞く、浮いた話なんだから無理はないだろう。だけど、改めて言われると、やはり恥ずかしい気持ちで。今すぐ穴を掘りたいほど。
「まあまあ、あまり良くないとは思うけど。いい練習にはなったんじゃない?」
「練習って……」
「これを機に恋愛してみるとかさ。花梨さえ良ければ、私も誰か紹介するし」
「ええ……」
「だって、昨日の人とまた、なんてことはないでしょ? どうせすぐ東京に帰っちゃうんだから。おそらく向こうもその気だろうし」
小鳥谷さんは今日東京へ戻る。そうすれば後は仕事での連絡くらいで、プライベートで会うことは二度とないはずだ。
きっと向こうだって、一夜の関係だと割り切っている。だから、私も分かっていて、体を許したというのに。
「え、まさか惚れちゃったとか……?」
「な、ないよ! ないない!」
さすがに、そこまでウブじゃない。経験がないとはいえ、物分かりはいいはずだ。だけど――
彼と出会ってから今までずっと、未だ私の胸につっかえているもの。みなみはその正体を汲んで、小さくため息をついた。
「あのさ、その人がどれだけ誠に似てるかはわからないけど……別人なんだよ?」
「それはわかってるよ、似てるってわけじゃないし」
「じゃあ何で……」
「ただ……なんとなく、あの人といると変な感じがするんだよね……」
「変って?」
「前から知っているような……懐かしいような、不思議な感じ」
言葉ではうまく説明できない。だから私も戸惑っているのだ。
「うーん……たぶん、男の人と出かけるのとかも久々だったからさ、無意識に誠と重ねて思い込んじゃってるんじゃないの? そうでもなきゃ、そんな話ありえなくない?」
みなみの言う通りなのだろうか。自分の中ではとっくに吹っ切れていたはずなのに、まだどこかで誠に未練があるから。
確かに、昨日小鳥谷さんに抱かれた時だって、誠を思い出さなかったわけじゃない。でもそれは、直前まで誠の話をしていたことや、小鳥谷さんがあまりに誠を思い出させる言動をしたからであって……。
「まあ誠を思い出すのは仕方ないとしても、その人とは無関係なんだから」
「……そう、だよね」
男性経験は誠しかなかったから、比べるものがなくて、そう感じてしまったのかもしれない。もっと冷静にならなくては。
「いい経験だと思ってさ、次行こう次。恋愛のハードル、結構下がったんじゃない?」
「いや、いかないけど!?」
昨日のことがあったからといって、別に誰でもいいから恋愛する気になったわけじゃない。言われてみれば、リハビリくらいにはなったかもしれないけれど……。
みなみの話を半分聞き流しながら、すっかり汗をかいたアイスコーヒーに口をつけると、テーブルの上のスマートフォンが震えた。
「あ……」
まさかと思って見たディスプレイには、小鳥谷さんの名前が表示されている。ホテルを出てから一度も連絡がなかったから、今更電話がかかってくるなんて思わなかった。
「まさか、その人から?」
「う、うん……」
「出ないの?」
「うーん……」
正直、昨日の今日で気まずさがあり、出るのを躊躇ってしまう。しかしながら、どうせまた仕事で連絡をとらなきゃいけないのだから、とスマートフォンを手に取る。呼吸を落ち着かせた後で、おそるおそる通話ボタンを押した。
みなみは私の話を興味津々に聞いたあとで、未だ信じられないといったようにしみじみと頷いた。
「いやあ、あの花梨が……知らないうちに大人になってたんだね」
「あの花梨ってなに!?」
「だってこの間まで『恋愛はしない! 仕事!』だの豪語してて」
「う……」
「恋愛経験も誠としかない、妖精さんみたいなもんだし」
妖精さんはちょっと言い過ぎな気もする。セカンドバージンだったとはいえ、一応、経験はあるわけだし……。
「それなのに突然、シティーボーイとアバンチュールだなんて」
「ねえ、言い方!? どこのおばちゃん!?」
「あ〜私もその人見てみた~い。どんだけイケメンなの?」
みなみは完全に面白がっている。幼馴染の初めて聞く、浮いた話なんだから無理はないだろう。だけど、改めて言われると、やはり恥ずかしい気持ちで。今すぐ穴を掘りたいほど。
「まあまあ、あまり良くないとは思うけど。いい練習にはなったんじゃない?」
「練習って……」
「これを機に恋愛してみるとかさ。花梨さえ良ければ、私も誰か紹介するし」
「ええ……」
「だって、昨日の人とまた、なんてことはないでしょ? どうせすぐ東京に帰っちゃうんだから。おそらく向こうもその気だろうし」
小鳥谷さんは今日東京へ戻る。そうすれば後は仕事での連絡くらいで、プライベートで会うことは二度とないはずだ。
きっと向こうだって、一夜の関係だと割り切っている。だから、私も分かっていて、体を許したというのに。
「え、まさか惚れちゃったとか……?」
「な、ないよ! ないない!」
さすがに、そこまでウブじゃない。経験がないとはいえ、物分かりはいいはずだ。だけど――
彼と出会ってから今までずっと、未だ私の胸につっかえているもの。みなみはその正体を汲んで、小さくため息をついた。
「あのさ、その人がどれだけ誠に似てるかはわからないけど……別人なんだよ?」
「それはわかってるよ、似てるってわけじゃないし」
「じゃあ何で……」
「ただ……なんとなく、あの人といると変な感じがするんだよね……」
「変って?」
「前から知っているような……懐かしいような、不思議な感じ」
言葉ではうまく説明できない。だから私も戸惑っているのだ。
「うーん……たぶん、男の人と出かけるのとかも久々だったからさ、無意識に誠と重ねて思い込んじゃってるんじゃないの? そうでもなきゃ、そんな話ありえなくない?」
みなみの言う通りなのだろうか。自分の中ではとっくに吹っ切れていたはずなのに、まだどこかで誠に未練があるから。
確かに、昨日小鳥谷さんに抱かれた時だって、誠を思い出さなかったわけじゃない。でもそれは、直前まで誠の話をしていたことや、小鳥谷さんがあまりに誠を思い出させる言動をしたからであって……。
「まあ誠を思い出すのは仕方ないとしても、その人とは無関係なんだから」
「……そう、だよね」
男性経験は誠しかなかったから、比べるものがなくて、そう感じてしまったのかもしれない。もっと冷静にならなくては。
「いい経験だと思ってさ、次行こう次。恋愛のハードル、結構下がったんじゃない?」
「いや、いかないけど!?」
昨日のことがあったからといって、別に誰でもいいから恋愛する気になったわけじゃない。言われてみれば、リハビリくらいにはなったかもしれないけれど……。
みなみの話を半分聞き流しながら、すっかり汗をかいたアイスコーヒーに口をつけると、テーブルの上のスマートフォンが震えた。
「あ……」
まさかと思って見たディスプレイには、小鳥谷さんの名前が表示されている。ホテルを出てから一度も連絡がなかったから、今更電話がかかってくるなんて思わなかった。
「まさか、その人から?」
「う、うん……」
「出ないの?」
「うーん……」
正直、昨日の今日で気まずさがあり、出るのを躊躇ってしまう。しかしながら、どうせまた仕事で連絡をとらなきゃいけないのだから、とスマートフォンを手に取る。呼吸を落ち着かせた後で、おそるおそる通話ボタンを押した。
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