【コミカライズ原作】君とは二度、恋に落ちる〜初めましての彼に溺愛される理由〜
違和感の正体(2)
「それで、この後はどこへ行かれるんですか?」
「ええと、次は佃煮と塩辛専門の――」
「塩辛ですか!? 大好物です。酒のつまみにもピッタリですよね」
車を走らせながら、助手席から小鳥谷さんの楽しそうな視線を感じる。
「それならよかったです。定番のイカやウニに、あとホヤなんかもありますよ」
「いいですね、ホヤ。僕大好きなんですよ」
「そうなんですね。東京の人はあまり食べられないかと」
「まあ確かに、あまり食べる機会はないですね。学生のときに初めて食べたくらいで」
そう言えば誠も小さいころからホヤの塩辛が好きだったな。さっきのジェラートと言い、味覚が二人は似てるのかもしれない。何だか今日はやけに誠のことを思い出してしまうのは、これから行く場所のせいだろうか。
「……それから、その後は酒蔵に向かいます」
フルルの一番の主力商品は、お酒。お客さんはお酒とそれに合ったおつまみを購入する傾向にある。
正直今日は、酒蔵に寄ろうか迷っていたけれど、主力商品を見たいと言った小鳥谷さんにここへ連れて行かないわけにはいかない。少しだけ気乗りしない気持ちで、目的地へと車を走らせた。
小鳥谷さんが好きな塩辛をお土産で購入した後は、すぐ近くの酒蔵を目指す。車を走らせ『清田酒造』の駐車場に車を停めると、入口の暖簾をくぐった。
「こんにちは~」
「あ、花梨ちゃん! こんにちは! ごめんなさいね~。今お父さん出ちゃってて」
中から迎えてくれたのは、八重歯が可愛らしい、優しそうなおばさん。
「昨日電話したんですが、見学で」
ちらりと小鳥谷さんに目を向けると、彼は興味深そうに店の中を見回している。
「はいはい、どうぞどうぞ。って、東京から来たっていうのはそちらの方? ま、イケメンね! キラキラして眩しいわ~」
目を輝かせて、思ったことをストレートに言ってしまうのがおばさんらしい。しかもここでもキラキラしてるなんて言われて、どれだけイケメンなのだろうか。
おばさんは小鳥谷さんと軽く挨拶を交わすと、何やら渡したいものがあると言って、一度奥へと戻って行った。
「仲良いんですね」
「あ、実はここ幼馴染の実家で」
「……幼馴染?」
「はい、と言っても今はいないんですけど……」
そう、ここは誠の実家なのだ。幼馴染故、小さい頃から家族ぐるみで仲良くさせてもらっていて、今でもたまに仕事で顔を合わせている。
「今は?」
「……亡くなっちゃったんです。もう九年も前になりますが」
「九年……。そうだったんですね」
気まずそうに目を伏せた小鳥谷さんに、気を使わないように慌てて笑顔を向ける。
「す、すみませんこんな話! ここのお酒とっても美味しいんですよ」
個人的に好きなお酒を勧めていると、おばさんが奥からカラフルなラベルのついた一升瓶を持ってきた。
「これ、どうしたんですか?」
ラベルには何も文字が書かれておらず、可愛らしい花びらのデコレーションがされている。
「この間ね、親戚の結婚式があって。せっかくだから名前を入れたお酒をプレゼントしようとしたんだけど、これ書き損じゃってね。よかったら、持っていかない?」
「ええ? いいんですか? でも、私こんなに飲めるかな……」
お酒はそこそこ好きだが、一人で一升瓶を飲むほど強いわけではない。さすがに戸惑っていると、おばさんは「いいから」と私に強引に手渡した。
「別に一度に飲まなくてもいいんだから。ほら、小鳥谷さんと一緒に飲んでもらってもいいし、ね?」
「え!? いや、それは――」
「いいですね。僕お酒大好きなので、楽しみです」
「こ、小鳥谷さん?」
否定する声にかぶせて、小鳥谷さんが食い入るように入ってくる。まあきっとまた社交辞令で、一緒に飲むなんてことはないと思うけれど。
「あら、本当? よかったら試飲もしてね! うちのお酒、美味しいんだから」
「嬉しいです。それに、内装も素敵ですね。何だか懐かしいような落ち着いた気分にさせてくれます」
「……」
柔和に笑った小鳥谷さんを、おばさんはじっと見つめたまま固まってしまう。
「……あの?」
「ああ、ごめんなさいね。ちょっと息子に似てたものだから」
「え?」
「なーんて、こんなイケメンじゃないんだけどね! 早くもボケ始めちゃったかしら」
おばさんは笑いながら、小鳥谷さんに試飲を勧める。運転で飲めない私は二人の様子を横目に、胸に抱いた違和感について考えていた。
「ええと、次は佃煮と塩辛専門の――」
「塩辛ですか!? 大好物です。酒のつまみにもピッタリですよね」
車を走らせながら、助手席から小鳥谷さんの楽しそうな視線を感じる。
「それならよかったです。定番のイカやウニに、あとホヤなんかもありますよ」
「いいですね、ホヤ。僕大好きなんですよ」
「そうなんですね。東京の人はあまり食べられないかと」
「まあ確かに、あまり食べる機会はないですね。学生のときに初めて食べたくらいで」
そう言えば誠も小さいころからホヤの塩辛が好きだったな。さっきのジェラートと言い、味覚が二人は似てるのかもしれない。何だか今日はやけに誠のことを思い出してしまうのは、これから行く場所のせいだろうか。
「……それから、その後は酒蔵に向かいます」
フルルの一番の主力商品は、お酒。お客さんはお酒とそれに合ったおつまみを購入する傾向にある。
正直今日は、酒蔵に寄ろうか迷っていたけれど、主力商品を見たいと言った小鳥谷さんにここへ連れて行かないわけにはいかない。少しだけ気乗りしない気持ちで、目的地へと車を走らせた。
小鳥谷さんが好きな塩辛をお土産で購入した後は、すぐ近くの酒蔵を目指す。車を走らせ『清田酒造』の駐車場に車を停めると、入口の暖簾をくぐった。
「こんにちは~」
「あ、花梨ちゃん! こんにちは! ごめんなさいね~。今お父さん出ちゃってて」
中から迎えてくれたのは、八重歯が可愛らしい、優しそうなおばさん。
「昨日電話したんですが、見学で」
ちらりと小鳥谷さんに目を向けると、彼は興味深そうに店の中を見回している。
「はいはい、どうぞどうぞ。って、東京から来たっていうのはそちらの方? ま、イケメンね! キラキラして眩しいわ~」
目を輝かせて、思ったことをストレートに言ってしまうのがおばさんらしい。しかもここでもキラキラしてるなんて言われて、どれだけイケメンなのだろうか。
おばさんは小鳥谷さんと軽く挨拶を交わすと、何やら渡したいものがあると言って、一度奥へと戻って行った。
「仲良いんですね」
「あ、実はここ幼馴染の実家で」
「……幼馴染?」
「はい、と言っても今はいないんですけど……」
そう、ここは誠の実家なのだ。幼馴染故、小さい頃から家族ぐるみで仲良くさせてもらっていて、今でもたまに仕事で顔を合わせている。
「今は?」
「……亡くなっちゃったんです。もう九年も前になりますが」
「九年……。そうだったんですね」
気まずそうに目を伏せた小鳥谷さんに、気を使わないように慌てて笑顔を向ける。
「す、すみませんこんな話! ここのお酒とっても美味しいんですよ」
個人的に好きなお酒を勧めていると、おばさんが奥からカラフルなラベルのついた一升瓶を持ってきた。
「これ、どうしたんですか?」
ラベルには何も文字が書かれておらず、可愛らしい花びらのデコレーションがされている。
「この間ね、親戚の結婚式があって。せっかくだから名前を入れたお酒をプレゼントしようとしたんだけど、これ書き損じゃってね。よかったら、持っていかない?」
「ええ? いいんですか? でも、私こんなに飲めるかな……」
お酒はそこそこ好きだが、一人で一升瓶を飲むほど強いわけではない。さすがに戸惑っていると、おばさんは「いいから」と私に強引に手渡した。
「別に一度に飲まなくてもいいんだから。ほら、小鳥谷さんと一緒に飲んでもらってもいいし、ね?」
「え!? いや、それは――」
「いいですね。僕お酒大好きなので、楽しみです」
「こ、小鳥谷さん?」
否定する声にかぶせて、小鳥谷さんが食い入るように入ってくる。まあきっとまた社交辞令で、一緒に飲むなんてことはないと思うけれど。
「あら、本当? よかったら試飲もしてね! うちのお酒、美味しいんだから」
「嬉しいです。それに、内装も素敵ですね。何だか懐かしいような落ち着いた気分にさせてくれます」
「……」
柔和に笑った小鳥谷さんを、おばさんはじっと見つめたまま固まってしまう。
「……あの?」
「ああ、ごめんなさいね。ちょっと息子に似てたものだから」
「え?」
「なーんて、こんなイケメンじゃないんだけどね! 早くもボケ始めちゃったかしら」
おばさんは笑いながら、小鳥谷さんに試飲を勧める。運転で飲めない私は二人の様子を横目に、胸に抱いた違和感について考えていた。
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