恋と遺伝子~相性98%のおためし同居生活~
過去とこれから(1)
晴れて啓さんと恋人になってしばらく。無事、遺伝子マッチングシステムのサービスが開始され、結婚相談所の会員数はさらにうなぎ上りに。業界内でも話題に上がりっぱなしだ。
私はというと、以前出していた企画が通り、プレミアム会員向けのデートサポートサービスとして本格的に導入が決まり、忙しく働いていた。
デスクでパソコンの画面に集中していると、同僚の滝沢さんに軽い調子で声をかけられる。
「姫松さん最近調子良いっすね~。何かいいことありました?」
「そうですか? 特には……」
「うんうん、仕事も早いし。 ってことで、俺の担当分の仕込み手伝ってくれたりは……」
「しません!」
「ぐっ……」
二つ返事で断ると、項垂れる滝沢さんの後ろから松園さんが顔を出す。
「滝沢くんは姫松さんに頼ってないで、自分でちゃんと仕事してくださいね~」
仕事は調子を掴んでから、驚くほど順調だ。
それに――
「うわ、社長こっち見てないすか……? 気のせい?」
「滝沢くんが仕事サボってるからでしょ~。ほら、真面目に働く」
「はーい……」
社長室から出てきた啓さんと、遠目で目が合い、誰にもバレないようにアイコンタクトを交わす。社内では話すことはないけれど、恋愛のほうも絶好調だった。
今日は金曜日で、夜から会う約束をしている。その為に仕事を頑張ろうと気合を入れると、デスクへ戻った。
その夜、啓さんの家でくつろいでいると、会食を終えた啓さんが帰ってきた。
彼にはまた一緒に住めばいいと言われていたけれど、引っ越したばかりでマンションを解約するのも気が引けてしまい、今はまだ別々に暮らしている。代わりに合鍵を貰って、週に何度か啓さんの家に泊まりに行くことにしていた。そうでないと、彼が眠れないと言うから。
「あ、おかえりなさい」
リビングで啓さんを出迎えると、会うなりキスをせがまれる。
挨拶程度の軽いキスだと想定していたけれど、すぐに彼の舌が私を捕らえる。
「ひ、ろむさん……それは後で……」
リビングの真ん中で突っ立ったまま。心の準備もままならないまま受けたキスに少し身を引くと、「まだだ」と腰を引き寄せられた。
「今週は月曜しか会えなかったから、足りない」
「そんな、んっ……」
再びキスの洗礼を受け、足がガクガクと震え始める。
啓さんと付き合い始めて、新しく知ることはまだたくさんあった。まずは、彼は寂しがりやであること。たった数日会えないだけで、一晩中私を離してはくれない。
以前七滝さんが彼を寂しがりやだと言った意味が、ようやく分かった。
キスをしながら、啓さんの無骨な手が太腿を伝ってスカートの中に侵入したとき、さすがにダメだと彼の手を抑え込んだ。
「お風呂、入ってからがいいです……」
「俺はこのままでもいいが」
「今日はたくさん汗かいたので……」
「その方が興奮する」
「し、しません! ダメです!」
次に、なかなかの変態であること。これは付き合う前に関係を持った時点で薄々気付いてはいたけれど、付き合ってからはあからさまだった。
「……わかった。それなら一緒に入るぞ」
「え……」
「え、じゃない。今日は朝まで傍にいろ」
そして、平気で赤面するような台詞を伝えてくれる。そんな彼に何度もドキドキさせられながら、お風呂場へと連行された。
二人で入るには十分の広さの湯船に浸かると、啓さんは必要以上に距離を詰めてくる。
私を後ろから抱く形でしっかり囲い込むと、満足そうに話し始めた。
「仕事はどうだ?」
「はい、今のところ順調です。すっかり慣れましたし」
もちろん啓さんとは、いちゃついているだけではない。会えない間にあったことなど、他愛もない話をする時間がとても楽しかったりもする。
今日も仕事で褒められた話などを伝えたけれど、彼はどこか不満そうに口を開いた。
「君のチームは少し仲良すぎないか? とくにあの、今日君の隣にいた……」
啓さんが見ていたということは、滝沢さんと松園さんのことだろう。
「以前飲み会の帰りにも絡まれていただろ。下心があると困る」
「えっと、滝沢さんのことですかね? 心配しなくても大丈夫ですよ。滝沢さん、ちょっと酒癖は悪いですけど、普段はフレンドリーなだけですから」
啓さんの新たな一面の最後は、心配性であること。
「それが困る。仁菜は危機感がなさすぎるから」
「そんなことは……」
「あまり俺以外の男と仲良くするな。仕事でも最低限で済ませてくれ」
――心配性改め、ちょっと嫉妬深い。いや、かなりかもしれない。
「君は俺だけのものでいてくれればいいから」
そう耳元で囁き、こめかみにキスを落とす。
こうやって彼は何の恥じらいもなく愛情表現し、私を適度に縛ってくる。けれどそれはそれで愛されている気がして、嬉しく思う私もまた大概だ。
ちゅ、と音を立てながら後ろから至るところにキスを落とされていく。
「ここでするんですか……?」
「味見くらいいいだろ。ベッドまで我慢できそうもない」
「味見って……あっ……」
「今日はのぼせないようにな」
そんなこと言われたって、のぼせてしまう未来しか見えない。お風呂のお湯にではなくて、彼に。
水面がチャプチャプと水音を立てながら、二人から漏れる吐息の音をかき消していく。
白い靄がかかるお風呂場で、味見と言いながら、存分に抱かれたのだった。
私はというと、以前出していた企画が通り、プレミアム会員向けのデートサポートサービスとして本格的に導入が決まり、忙しく働いていた。
デスクでパソコンの画面に集中していると、同僚の滝沢さんに軽い調子で声をかけられる。
「姫松さん最近調子良いっすね~。何かいいことありました?」
「そうですか? 特には……」
「うんうん、仕事も早いし。 ってことで、俺の担当分の仕込み手伝ってくれたりは……」
「しません!」
「ぐっ……」
二つ返事で断ると、項垂れる滝沢さんの後ろから松園さんが顔を出す。
「滝沢くんは姫松さんに頼ってないで、自分でちゃんと仕事してくださいね~」
仕事は調子を掴んでから、驚くほど順調だ。
それに――
「うわ、社長こっち見てないすか……? 気のせい?」
「滝沢くんが仕事サボってるからでしょ~。ほら、真面目に働く」
「はーい……」
社長室から出てきた啓さんと、遠目で目が合い、誰にもバレないようにアイコンタクトを交わす。社内では話すことはないけれど、恋愛のほうも絶好調だった。
今日は金曜日で、夜から会う約束をしている。その為に仕事を頑張ろうと気合を入れると、デスクへ戻った。
その夜、啓さんの家でくつろいでいると、会食を終えた啓さんが帰ってきた。
彼にはまた一緒に住めばいいと言われていたけれど、引っ越したばかりでマンションを解約するのも気が引けてしまい、今はまだ別々に暮らしている。代わりに合鍵を貰って、週に何度か啓さんの家に泊まりに行くことにしていた。そうでないと、彼が眠れないと言うから。
「あ、おかえりなさい」
リビングで啓さんを出迎えると、会うなりキスをせがまれる。
挨拶程度の軽いキスだと想定していたけれど、すぐに彼の舌が私を捕らえる。
「ひ、ろむさん……それは後で……」
リビングの真ん中で突っ立ったまま。心の準備もままならないまま受けたキスに少し身を引くと、「まだだ」と腰を引き寄せられた。
「今週は月曜しか会えなかったから、足りない」
「そんな、んっ……」
再びキスの洗礼を受け、足がガクガクと震え始める。
啓さんと付き合い始めて、新しく知ることはまだたくさんあった。まずは、彼は寂しがりやであること。たった数日会えないだけで、一晩中私を離してはくれない。
以前七滝さんが彼を寂しがりやだと言った意味が、ようやく分かった。
キスをしながら、啓さんの無骨な手が太腿を伝ってスカートの中に侵入したとき、さすがにダメだと彼の手を抑え込んだ。
「お風呂、入ってからがいいです……」
「俺はこのままでもいいが」
「今日はたくさん汗かいたので……」
「その方が興奮する」
「し、しません! ダメです!」
次に、なかなかの変態であること。これは付き合う前に関係を持った時点で薄々気付いてはいたけれど、付き合ってからはあからさまだった。
「……わかった。それなら一緒に入るぞ」
「え……」
「え、じゃない。今日は朝まで傍にいろ」
そして、平気で赤面するような台詞を伝えてくれる。そんな彼に何度もドキドキさせられながら、お風呂場へと連行された。
二人で入るには十分の広さの湯船に浸かると、啓さんは必要以上に距離を詰めてくる。
私を後ろから抱く形でしっかり囲い込むと、満足そうに話し始めた。
「仕事はどうだ?」
「はい、今のところ順調です。すっかり慣れましたし」
もちろん啓さんとは、いちゃついているだけではない。会えない間にあったことなど、他愛もない話をする時間がとても楽しかったりもする。
今日も仕事で褒められた話などを伝えたけれど、彼はどこか不満そうに口を開いた。
「君のチームは少し仲良すぎないか? とくにあの、今日君の隣にいた……」
啓さんが見ていたということは、滝沢さんと松園さんのことだろう。
「以前飲み会の帰りにも絡まれていただろ。下心があると困る」
「えっと、滝沢さんのことですかね? 心配しなくても大丈夫ですよ。滝沢さん、ちょっと酒癖は悪いですけど、普段はフレンドリーなだけですから」
啓さんの新たな一面の最後は、心配性であること。
「それが困る。仁菜は危機感がなさすぎるから」
「そんなことは……」
「あまり俺以外の男と仲良くするな。仕事でも最低限で済ませてくれ」
――心配性改め、ちょっと嫉妬深い。いや、かなりかもしれない。
「君は俺だけのものでいてくれればいいから」
そう耳元で囁き、こめかみにキスを落とす。
こうやって彼は何の恥じらいもなく愛情表現し、私を適度に縛ってくる。けれどそれはそれで愛されている気がして、嬉しく思う私もまた大概だ。
ちゅ、と音を立てながら後ろから至るところにキスを落とされていく。
「ここでするんですか……?」
「味見くらいいいだろ。ベッドまで我慢できそうもない」
「味見って……あっ……」
「今日はのぼせないようにな」
そんなこと言われたって、のぼせてしまう未来しか見えない。お風呂のお湯にではなくて、彼に。
水面がチャプチャプと水音を立てながら、二人から漏れる吐息の音をかき消していく。
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