恋と遺伝子~相性98%のおためし同居生活~
公開告白(3)
茜ちゃんと久しぶりにお酒を飲んだ後、駅で彼女と別れる。
うちに泊まりにくればと誘ったけれど、何やら大学時代の元カレの家に泊まるらしい。
元サヤに戻れるかもと、どこまでも恋愛に積極的な彼女には見習うべきところがあると感じた。
酔っぱらった彼女には「それよりも社長に連絡すること!」とまで言われる始末だ。
後ほど報告すると言ったはいいけれど、どうするべきか。
駅のホームで彼に連絡を取る方法を考えていると、スマートフォンに一件の新着メッセージがあることに気が付いた。
差出人は七滝さん。『新生活はどうですか。何かお困りのことはないですか』と。
実は引っ越した後も、こうして彼からは何度か連絡をもらっている。
社長だけでなく、私にまで完璧に気を使ってくれるのだから、やっぱり彼は秘書の鏡だ。
返信を打ちながらふと手を止める。
七滝さんに、啓さんの連絡先を聞けばいい。彼なら教えてくれる――。
時刻は二十三時過ぎ。メッセージが届いていたのは一時間ほど前。
今電話するのは時間的にも迷惑だろう、とメッセージを送ろうとしたけれど、酔った勢いで通話ボタンを押した。
プルルルル、プルルルル――
ワンコール、ツーコールと、着信音が耳に残る。
緊張しながら迎えた四回目のコールの後、彼が電話に出た。
『はい。姫松さんですか?』
まさか電話がかかってくると思っていなかったのか、電話の向こうで七滝さんは少し驚いているように思えた。
「こんばんは。夜分にすみません……。実は、あの、社長の連絡先を教えていただけないでしょうか……?」
おそるおそる本題をぶつけると、電話の奥でしばしの沈黙が流れる。
「あの、七滝さん……?」
耐え切れず声をかけると、息を吐く音が聞こえた。
『姫松さん。これから少しお会いできますか?』
「え? 今からですか……?」
『実は社長が――』
七滝さんとの電話を切った後、すぐに来た電車に乗り、社長のマンションへと向かう。
マンションのエントランスに到着すると、連絡した通り七滝さんが待っていた。
「こんな時間に呼び出して申し訳ございません」
「い、いえ。あの、社長は……」
息を切らしながら、啓さんの状況を確認する。
七滝さんから、社長が倒れたと聞いたのはおおよそ三十分前。
慌てて来たというのに、七滝さんは涼しい顔で自宅の鍵を私に託した。
「いつもの不眠が原因ですので、休めば問題ないでしょう」
「えっ」
「ですが、姫松さんがいらっしゃったほうが社長もよく眠れると思いますので」
「ええと、そういうことでしたら……」
どこか悪いのか心配して来たというのに、意外にも平気そうな様子に拍子抜けしてしまう。
鍵を返そうとするけれど、七滝さんは断固として受け取ってはくれない。
「もう終電もありませんし。私としても社長が心配なので、お願いできませんか?」
ここから私の住む家までは電車に乗る必要がある。
時計を見ると、時刻は日付を跨ごうとしていた。
きっと七滝さんは車で帰るのだろう。けれど、その選択肢を教えてはくれなかった。
「さすがに勝手に家に入るのは……」
「大丈夫です。前まで住んでいたんですし、私がきちんと責任を取りますから」
グイグイと私をエントランスに追いやると、七滝さんはにこりと微笑む。
そのまま「では、おやすみなさい」と逃げるように駐車場の方へ消えてしまった。
「どうしよう……」
鍵を受け取った以上は返す必要がある。
それに、七滝さんからは肝心の社長の連絡先を聞いていない。
してやられた感が否めなく、深くため息をつく。
でも、これは七滝さんがくれたチャンスなのかもしれない。
そう思い直し、既に懐かしく感じるエントランスをくぐった。
うちに泊まりにくればと誘ったけれど、何やら大学時代の元カレの家に泊まるらしい。
元サヤに戻れるかもと、どこまでも恋愛に積極的な彼女には見習うべきところがあると感じた。
酔っぱらった彼女には「それよりも社長に連絡すること!」とまで言われる始末だ。
後ほど報告すると言ったはいいけれど、どうするべきか。
駅のホームで彼に連絡を取る方法を考えていると、スマートフォンに一件の新着メッセージがあることに気が付いた。
差出人は七滝さん。『新生活はどうですか。何かお困りのことはないですか』と。
実は引っ越した後も、こうして彼からは何度か連絡をもらっている。
社長だけでなく、私にまで完璧に気を使ってくれるのだから、やっぱり彼は秘書の鏡だ。
返信を打ちながらふと手を止める。
七滝さんに、啓さんの連絡先を聞けばいい。彼なら教えてくれる――。
時刻は二十三時過ぎ。メッセージが届いていたのは一時間ほど前。
今電話するのは時間的にも迷惑だろう、とメッセージを送ろうとしたけれど、酔った勢いで通話ボタンを押した。
プルルルル、プルルルル――
ワンコール、ツーコールと、着信音が耳に残る。
緊張しながら迎えた四回目のコールの後、彼が電話に出た。
『はい。姫松さんですか?』
まさか電話がかかってくると思っていなかったのか、電話の向こうで七滝さんは少し驚いているように思えた。
「こんばんは。夜分にすみません……。実は、あの、社長の連絡先を教えていただけないでしょうか……?」
おそるおそる本題をぶつけると、電話の奥でしばしの沈黙が流れる。
「あの、七滝さん……?」
耐え切れず声をかけると、息を吐く音が聞こえた。
『姫松さん。これから少しお会いできますか?』
「え? 今からですか……?」
『実は社長が――』
七滝さんとの電話を切った後、すぐに来た電車に乗り、社長のマンションへと向かう。
マンションのエントランスに到着すると、連絡した通り七滝さんが待っていた。
「こんな時間に呼び出して申し訳ございません」
「い、いえ。あの、社長は……」
息を切らしながら、啓さんの状況を確認する。
七滝さんから、社長が倒れたと聞いたのはおおよそ三十分前。
慌てて来たというのに、七滝さんは涼しい顔で自宅の鍵を私に託した。
「いつもの不眠が原因ですので、休めば問題ないでしょう」
「えっ」
「ですが、姫松さんがいらっしゃったほうが社長もよく眠れると思いますので」
「ええと、そういうことでしたら……」
どこか悪いのか心配して来たというのに、意外にも平気そうな様子に拍子抜けしてしまう。
鍵を返そうとするけれど、七滝さんは断固として受け取ってはくれない。
「もう終電もありませんし。私としても社長が心配なので、お願いできませんか?」
ここから私の住む家までは電車に乗る必要がある。
時計を見ると、時刻は日付を跨ごうとしていた。
きっと七滝さんは車で帰るのだろう。けれど、その選択肢を教えてはくれなかった。
「さすがに勝手に家に入るのは……」
「大丈夫です。前まで住んでいたんですし、私がきちんと責任を取りますから」
グイグイと私をエントランスに追いやると、七滝さんはにこりと微笑む。
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それに、七滝さんからは肝心の社長の連絡先を聞いていない。
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