恋と遺伝子~相性98%のおためし同居生活~
芽生えた気持ち(3)
濃密な週末はあっという間に過ぎ、月曜日を迎えた。
結局あの日、ホテルで九時過ぎまで寝てしまった私たちは、急いで支度をし、遅めのモーニングを食べてから都内の自宅へと戻った。啓さんは用事があると午後から出かけて行ったけれど、これ以上一緒にいると変な気持ちが芽生えてしまいそうだったので、正直ほっとした。
一緒に暮らすと決めてから一週間。すでに私たちの相性の良さは互いに認めてはいたが、そのせいで早めにこの生活が終わってしまうのは嫌だと感じた。だから敢えてそのことには触れず、また一週間をスタートさせたのだ。
朝、寝ぼけ眼をこすりながら廊下へ出ると、既に着替えを終えた啓さんと出くわす。びしっとスーツを決め込んで、完全に仕事モードだ。週末、ラフな彼を見ていたからこそ、何だか新鮮な気持ちになった。
「おはようございます。もうお出かけですか?」
「おはよう。ああ、急用でな。朝から会社に寄らなきゃいけなくなった」
だから朝食は一緒に食べられないと、彼が申し訳なさそうに言う。
「気にしないでください。あ、でもサプリメントで済ませちゃダメですよ?」
「……善処する」
「もう済ませちゃいました?」
不自然な間に尋ねてみると、彼はバツが悪そうに認める。その様子が可愛くて思わず笑みをこぼした。
「今日はもしかすると早く帰れるかもしれない。良かったら一緒に夕食をとらないか?」
平日に啓さんと夕食をとることはまずない。予想外の誘いに嬉しくなったけれど、あいにく今日はチームの歓迎会であることを思い出す。みんなの日程が合わず月曜日になったのだ。
「すみません……今日は歓迎会があって」
「月曜からか? そういうことなら大丈夫だ」
「はい。せっかくせっかくお誘いいただいたのにすみません」
「いいんだ。俺も約束はできないからな。ただ……あまり飲み過ぎるなよ?」
そう言って、彼がぽんと頭に手を置く。不意の行動にドキッとさせられたけれど、すぐに彼の口角が上がった。
「寝ぐせ、可愛いな」
「え!?」
彼に触れられたところに手を置くと、少しだけ髪が盛り上がっている。同時に、平然と会話していたけれど、完全に寝起きのままであることに気付き、恥ずかしさがこみ上げてきた。
「俺はそっちのほうが好きだけどな。ちゃんと直していけよ」
「っ、はい……」
髪を抑えるべきか、すっぴんの顔を隠すべきか、はたまた部屋に戻って姿を消すべきか。いろいろ悩んでいるうちに、啓さんは支度を済ませて家を出て行ってしまった。
「好きって……」
深い意味はないだろうが、今このタイミングで言われると何とも複雑な気分だ。
廊下に残る、微かな彼の残り香を感じながら、洗面所へと向かった。
その日は少し早めに出社し、朝のうちに簡単な業務を終えると、定刻にブリーフィングが始まった。
「じゃあ、先週のThanks me発表しましょ~」
本社で毎週恒例の、自分のために何かをすること。今週は啓さんとのデートで、したいことを叶えてもらったこともあり、容易に話すことができた。
水族館へ行ったこと、美味しいレストランで食事をしたことを、あくまで友人としたかのように掻い摘んで話すと、滝沢さんがニヤニヤと口を挟んでくる。
「それ、もしかしてデートっすか?」
「いえ、友達とです!」
「怪しいなー。てか、姫松さん彼氏いないんすか?」
「滝沢くん、それセクハラですよ~?」
すかさず松園さんが突っ込みを入れて、場が和む。何事もなく話が戻ったあとで、松園さんがパンと手を叩いた。
「そうだ。今日は姫松さんの歓迎会なので、みなさん業務調整お願いしますね~」
「はーい」
「じゃあ今日も頑張りましょう~」
ブリーフィングを終え、各々が席へ戻っていく。今日は定時帰り。それまでにやることを終わらせようと気合を入れた。
結局あの日、ホテルで九時過ぎまで寝てしまった私たちは、急いで支度をし、遅めのモーニングを食べてから都内の自宅へと戻った。啓さんは用事があると午後から出かけて行ったけれど、これ以上一緒にいると変な気持ちが芽生えてしまいそうだったので、正直ほっとした。
一緒に暮らすと決めてから一週間。すでに私たちの相性の良さは互いに認めてはいたが、そのせいで早めにこの生活が終わってしまうのは嫌だと感じた。だから敢えてそのことには触れず、また一週間をスタートさせたのだ。
朝、寝ぼけ眼をこすりながら廊下へ出ると、既に着替えを終えた啓さんと出くわす。びしっとスーツを決め込んで、完全に仕事モードだ。週末、ラフな彼を見ていたからこそ、何だか新鮮な気持ちになった。
「おはようございます。もうお出かけですか?」
「おはよう。ああ、急用でな。朝から会社に寄らなきゃいけなくなった」
だから朝食は一緒に食べられないと、彼が申し訳なさそうに言う。
「気にしないでください。あ、でもサプリメントで済ませちゃダメですよ?」
「……善処する」
「もう済ませちゃいました?」
不自然な間に尋ねてみると、彼はバツが悪そうに認める。その様子が可愛くて思わず笑みをこぼした。
「今日はもしかすると早く帰れるかもしれない。良かったら一緒に夕食をとらないか?」
平日に啓さんと夕食をとることはまずない。予想外の誘いに嬉しくなったけれど、あいにく今日はチームの歓迎会であることを思い出す。みんなの日程が合わず月曜日になったのだ。
「すみません……今日は歓迎会があって」
「月曜からか? そういうことなら大丈夫だ」
「はい。せっかくせっかくお誘いいただいたのにすみません」
「いいんだ。俺も約束はできないからな。ただ……あまり飲み過ぎるなよ?」
そう言って、彼がぽんと頭に手を置く。不意の行動にドキッとさせられたけれど、すぐに彼の口角が上がった。
「寝ぐせ、可愛いな」
「え!?」
彼に触れられたところに手を置くと、少しだけ髪が盛り上がっている。同時に、平然と会話していたけれど、完全に寝起きのままであることに気付き、恥ずかしさがこみ上げてきた。
「俺はそっちのほうが好きだけどな。ちゃんと直していけよ」
「っ、はい……」
髪を抑えるべきか、すっぴんの顔を隠すべきか、はたまた部屋に戻って姿を消すべきか。いろいろ悩んでいるうちに、啓さんは支度を済ませて家を出て行ってしまった。
「好きって……」
深い意味はないだろうが、今このタイミングで言われると何とも複雑な気分だ。
廊下に残る、微かな彼の残り香を感じながら、洗面所へと向かった。
その日は少し早めに出社し、朝のうちに簡単な業務を終えると、定刻にブリーフィングが始まった。
「じゃあ、先週のThanks me発表しましょ~」
本社で毎週恒例の、自分のために何かをすること。今週は啓さんとのデートで、したいことを叶えてもらったこともあり、容易に話すことができた。
水族館へ行ったこと、美味しいレストランで食事をしたことを、あくまで友人としたかのように掻い摘んで話すと、滝沢さんがニヤニヤと口を挟んでくる。
「それ、もしかしてデートっすか?」
「いえ、友達とです!」
「怪しいなー。てか、姫松さん彼氏いないんすか?」
「滝沢くん、それセクハラですよ~?」
すかさず松園さんが突っ込みを入れて、場が和む。何事もなく話が戻ったあとで、松園さんがパンと手を叩いた。
「そうだ。今日は姫松さんの歓迎会なので、みなさん業務調整お願いしますね~」
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「じゃあ今日も頑張りましょう~」
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