【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

私は貴方の灯台だから3

「海が大好きだった灯里が海に潜れなくなるなんて、どれだけの恐怖だったか。だから、そんなところに戻らないでって言ってくれる灯里の気持ちを真剣に受け止めてる」

 けど、と蒼人は絞り出すような声を出した。 

「陸に上がれば、俺は俺でなくなる」

「試しもしないで言い切っちゃえるんだ?」

 灯里は悲しく笑う。

 しょせん、彼にとって自分は試して見る価値もないくらいの『大事』でしかないのだ。

「ああ。俺は陸に上がってる間も、どうすれば海難事故の生存確率を挙げられるかずっと考えていた。灯里と付き合いはじめてから、君のPTSDを知って。『どうしてもっと早く動けなかったんだ。早く現場に駆けつけるために俺達にできることはなんだ』ってずっと同僚とディスカッションしている」

 ――あ。
 唐突に悟る。

 灯里の好きな蒼人は魂が海でできている蒼人だった。

 彼は陸でも、海にい続けている。

 ケアハウスで蒼人に惹かれたのも、彼が灯里を救ってくれた救難隊員だったからだ。
 彼がリハビリを必死に行っていたのだって、未来でも救難隊員でありたいからだ。 

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