ひきこもりは途方にくれる3

　それとこれとは違う。

　……違わないのだ。

　町なかのオフィスに行くのにも、危険はついて回る。

『安全』だと言い切るのは、危険を見てみぬふりしているのか、無意識に安全に気を配っているか。

　旅行先で事故や災害に見舞われるかもしれない。
　どこにも行かなくても、病魔に侵されるかもしれない。

　どれだけ真剣に気をつけていたとしても、命を失う時がある。

「私、櫂斗さんとお見合いさせられたんです」

　灯里はポツリと言った。
　振袖を着せてもらった見合いがまさにそれだったのだと伝えた。

「そのようね」

「櫂斗さんに取引を持ちかけられました」

「彼はなんと？」

　蒼人を海から離れさせれば二人の結婚を認めると言われたことを話した。

「あらあら」

　陽子は困ったように微笑む。

「櫂斗は、蒼人の父親がわりだった癖が未だに抜けないのね」

　自分は海から離れられないくせに困ったこと、という陽子の呟きを灯里は聞いていなかった。

「私、櫂斗さんの策に乗ります」

　陽子に宣言してみた。
　陽子はじっと灯里を見つめる。

「そんなにあの子と結婚したいのなら、櫂斗の許可など要りません。私が許します」

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ひきこもりは途方にくれる3

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