【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

蒼い悪夢9

「スペシャルなデートを考えたんだ」

「楽しみ。どこに向かってるの?」

「ついてのお楽しみ」

 男性は本命の女性にはサプライズをしたがるとなにかの記事で読んだ。
 だとしたら、蒼人の本命は自分なのだ。

 彼に気づかれないよう、深呼吸してこのデートを楽しむことに決めた。

 ……しかし。
 灯里は段々落ち着かなくなってきた。

 道路標識がどうも、葉山の方に向かっている気がする。
 海が近くなる。

 どきどきと、不安な波が潮騒のように灯里の心の中に生まれてきた。

 とうとう、道路沿いに海がちらちらと見えるようになってきた。
 動悸は激しくなっているのに、手足が冷たい。

 さすがに、蒼人が灯里の様子に気がついた。

「灯里、どうした。車に酔った? 目的地はもうすぐだけど、少し休むか?」

 灯里はううん、と首を横に振った。
 心臓がのどまでせりあがっている気がする。
 車が止まった瞬間、飛び出して走り出してしまいそうだ。

 それでも気がかりそうに蒼人はちらちらと見た。

「我慢できなくなったら言えよ? すぐ止めるから」
「うん」

 灯里のおそれは現実となった。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品