【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

蒼い悪夢2

 蒼人は灯里が話してくれたことを、二人にも話して聞かせた。
 蒼人はどうせ疑い深い兄が信じないだろうと思って事件の概要を再度確認しておいた。

 彼女の言った細かなことは、ほぼ事情聴取と海保が検分した状況と一致していた。
 救助者本人しか知り得ないことだった。

「灯里さんが……、そう」

「あの時、灯里はあと数時間発見が遅れたら危なかった」

 美容部員の職を馘になったのは、事件の発覚を恐れたダイビングショップの店長が、緊急時連絡先として預かっていた灯里の職場に遭難した末に入院中だと連絡しなかったからだ。

「ばあちゃん、最初は灯里のことを疑ったと思うけど、その後なんで俺に伝えなかった?」

 蒼人はきっと祖母をにらんだ。

「最初はね、彼女のことをみー?はー?だと思ったの。だから住人にも介護スタッフも箝口令を敷いたわ」

 仕方ないと思う。
 祖父亡きあと、祖母は大企業の会長に就任したのだから。

 おまけに孫の一人はタンカーの船長だ。
 弱みを握られたら、犯罪の片棒を担がせられかねない。

「でもね、話しているうちに心ばえのいい方だなと思ったの」

 祖母はおっとりと話した。

「だったら、なんで!」

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