【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

蒼い悪夢

 灯里の家を出ると、蒼人はすぐに基地へとは向かわなかった。
 代わりに一本の電話をかけた。

「兄貴、顔をかせ。ばあちゃんのケアハウスに来い」

『なんだ。あの女の化けの皮が剥がれたから、婆様と俺に慰めてほしいのか』

「いいから来いっ」

 蒼人は兄を祖母のケアハウスに呼びつけると、思い切り殴った。
 櫂斗はパテーションを巻き込んで派手に倒れた。

「施設ではお静かに!」

 受付の女性が威嚇するが、二人の祖母である女性は静かにお茶を飲んでいる。

「単なる兄弟喧嘩よ、気にしないで」

「……全く…ぼっちゃんがたもいい歳なんですから」

 ぶつくさ言いながら女性はパテーションを喧嘩の邪魔にならない場所にどかして、祖母にお茶を足してやっている。

 祖母が立ち上げたこのケアハウスはUNNO海運が全額出資している施設だ。
 退職した社員で行き場がない人間の受け入れ先でもある。

 入所者も介護職員も祖母と会長だった祖父の許で働いてきた人間なので、祖母には一際甘い。

「灯里は俺が救助した女性だ!」

 櫂斗はおろか、祖母も目を見張った。

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