【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

誤解と怒りと運命の人25

「灯里をマッサージしてあげる」
「くうっ」

 オフィスワークでパソコンをにらみっぱなしなので首や背中、腰がバッキバキである。

 たまに揉んでもらったのだが、蒼人は職場でもストレッチをしているせいか、妙に上手いのだ。
 しかも力が強いのもイイ。
 これも少なくとも十回……は可哀想だから三回くらいにしてあげようかな。

「いいって言うまでお姫様抱っこしてあげる」
「うう」
 
 この男が筋肉男子なら、こっちは筋肉フェチである。
 重さなど感じていないように横抱きされるのがとてもツボなのだ。

 灯里が嫌がるから、好きなものをプレゼントする奢ると言わないところもいい。

 ようやく、灯里の怒りは最後に燻っていた炎も消え去った。
 蒼人が灯里と少し距離をつくる。

「蒼人」
「灯里、キスしていい?」

 この男は灯里の機嫌をはかるのが抜群に上手い。
 自分が懐柔できそうだと知って色気を出してきた。
 男の顔が欲情に塗れている。
 ……自分もそうなのだろうなと思う。
 今の二人には体で仲直りすることが重要なのだ。

「ずるい」

 精一杯にらみつけたのに、何故か蒼人は愛おしそうに笑う。

「灯里は『ずるい』っていいながら許してくれるとき、口をへの字にして上目遣いでにらんでくる。最高に可愛いの知ってる?」

「知らない」
「俺が知ってるからいいよ。ねえ、キスさせて」 

 どろどろに甘やかしてあげるからと蕩けそうな声で乞われて、仕方なく灯里は目を閉じて顔を上向けた。

「ん」

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