【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

誤解と怒りと運命の人14

「介護施設に行くたびに『お孫さんが海上保安庁に勤務している女性は入所されてませんか?』って聞いて回った。一年探したけど、見つからなかった。でも、もういいかと思ったの」

「なんでだ」

 それを貴方が聞く?
 灯里はにらんだ。

 カーン。
 よかろう、ラウンドフォー。
 レフェリーストップなんて許さない。テクニカルノックアウトしてやる! 

「生かしてくれた『彼』への感謝を私が忘れなければいい。そして、ケアハウスで出会うおばあちゃんみんなを、『彼のおばあちゃん』と思うことに決めたから」

 そして蒼人に出逢ったからだ。

 灯里は蒼人をにらんでいたが、蒼人は彼女の話をしているあいだ目を床に落としたままだった。

 しかし、ようやく顔を上げて彼女をみた。

「灯里、君を助けたのは俺だ」
「え」

 灯里の周りから一切の音や景色が消えた。

 意識が、あの日の岩礁に連れ戻される。
 どこからか、男の声が聞こえてきた。

「俺はあの時、下田海上保安部に所属していた」

 ああ、救難隊員の声だ。
 どうして忘れてたんだろう。

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