【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

誤解と怒りと運命の人10

 そこからは乾きとの戦いだった。 

 もうすぐ日没という時間。

 ぐったりしている彼女に、バラバラ……とかすかな音が聞こえた。
は必死に立ち上がる。
 そして、船がはるか水平線に一艘。 

 見つけてほしいと灯里は必死に祈った。

 モーターボートが近づいてくる。
 ギリギリまで寄せて、浮き輪を投げてくれた。
 同時に、別の救難隊員が泳ぎながら彼女に近づいてくれた。

 灯里はもう立っていることしか出来ず、隊員が手を伸ばしてくれてその腕の中に倒れ込んだ。

「俺……」

 蒼人がよろめいたのに気づかず、灯里は話し続けた。

「なんで私がケアハウスに通うかって話だったね」 

 カーン。
 ラウンドツーだ。

 ――助け出されたとき。ともすれば意識を失いそうになっていた彼女に、救出してくれた隊員が一生懸命話しかけてくれた。

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