【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

誤解と怒りと運命の人7

 ふーん、謝る前にまだ私のことを詰問するのか。

 性悪な兄にあることないこと吹き込まれて、疑うことすら無く信じ込み、挙句のはては灯里に一〇〇パーセント騙されたと考えている。

 自分が犠牲者だと思い込み、傷ついている風情の男に腹が立つ。

 よかろう、ラウンドワンだ。

 カーン。
 灯里の頭の中にゴングが鳴った。

「一年前の●月、×日、伊豆諸島沖」

 蒼人の顔が、ハッとなった。

 本当は口に出すのも忌まわしい。
 けれど、今は怒りが恐怖を凌駕している。

「私は前職、美容部員だった」

 ――灯里は契約が切れると、色々な国に飛んで海に潜っていた。

 趣味ではあったが灯里のレベルは玄人はだし。
 ライセンスも取得していたし、なにかあると馴染みのスキューバショップの店長からファンダイバーとしてのバイトを頼まれていた。

 ダイバー仲間の研究員からは日焼けしている人や潮焼けしている人むけの化粧品モニターも受けており、趣味と実益をかねていた。

 ……あの日も。

『おーい、十人募集ー。金持ちのボンボンが海上パーティアーンド釣り大会やりたいんだってさ。旅費はセルフ。宿はうちで雑魚寝。船代とタンクはあっち負担で日当一万』

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