【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

誤解と怒りと運命の人6

 たまに「君の会社の創始者の名前を教えなさい」と言い出す説教好きな顧客がいる。

『わ、クイズ出題された!』と思わなくもないが、一年勤務していて僅か一例しか聞いたことがない。

 ましてや『顧客からのレアクイズ出題集』にも大株主について質問してきたクライアントはいなかったから、これからも知るつもりはなかった。

 第一、UNNOが海野の音読みだなんて誰が思いつくものか。

 ……灯里は「ウンノ」ではなく、「アンノ」か「アンノウン(UN KNOWN)」という読み方だと思っていたことは告白しない。

「私。遭難したとき以来、助けてくれた隊員を探してたって言ったよね?」

 二人の耳にきこえるのは、嵐の前の静けさ。

 大っ嫌いな客やクレームの客に、顔は無表情でも猫撫で声で話す。

 そんな時の自分は、自他認めるほど怒っている。

「灯里、いつ、どこで海難に遭った。なぜ、祖母のいるケアハウスに通う。なんで美容部員をやめて、コールセンターに勤務している」

 蒼人も無表情だ。

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