【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

御曹司との見合い13

 見合い時間も場所も頭に入っている。
 十一時に、オールドホテル『群青の間』。と、場所も時間もばっちりだ。

 …………なんとなく蒼人を想像してしまう名前だ。

「万が一、なにかあればホテルに託ければいいし」

 相手も自分にどうしても連絡が取りたいのならば、ホテルに伝言を寄越すだろう。

「ま、一日くらい大したことない」 

 見合い相手だって、ものの数時間も経てば二度と合わないのだ。
 真っ直ぐに家に帰ればすぐ連絡できる。
 灯里は掛布の中に潜りこむと、モゾモゾとポジションを寝心地いいものに微調整してから目を閉じた。
 が。

「……あっちからドタキャンしてくれないかな」

 往生際悪く呟いてみる。
 自分からは社命(というよりは焼肉ランチと来月の休日が惜しい)のため断れない。 

 が、相手から言ってもらうのはむしろ大歓迎だ。
 

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