【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

御曹司との見合い10

「なので、ケアハウス公認皆さんのお孫さんポジションである灯里さんのお泊まりは院長も大歓迎なんですよ!」

 そう言ってもらうと、少し申し訳なさが薄れる。

 シャワーを借りて、付き添い人用の簡易ベッドに寝転がってからふう、と息を吐き出す。

「助かった、かなあ。……そうだ、蒼人から連絡きているかな」

 灯里は携帯を取り出した。
 画面は真っ黒なままだ。

 メッセージがないということは蒼人は宿直中なのだろうなと思う。

 コールセンターに勤めてから灯里は、自分から連絡するということがなくなってしまった。
 顧客に連絡すると、しばしばタイミングの悪い時にかけてしまうことがある。

『運転中』
『今、天ぷらを揚げてる』

 事実なのだろうが、オペレーターからすると『頼むから出るな!』である。

 なのでメッセージですら、気にしないとわかっている友人宛でないと送らない。

 タイミングを気にしないでいられるSMSなら大丈夫と思うのだが、時差がある友人を着信音で起こしてしまったら、と思う。

「蒼人は大丈夫って言ってくれてるけど」

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