【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

御曹司との見合い2

 だとしても、見合いもたくさん持ち込まれているだろう。
 社外が嫌なら社内で調達すればいいのに。
 パワハラになるから社内は無理だろうか。

「たまたまよ。シーンとしている中、でっかい声で対応している美咲ちゃんを『なにこの女』って目で見てたもの」

 上司の言葉に灯里は苦笑した。

「身もふたもないなー」

 それでなんで、見合いにつながるのか。

「あの時の美咲ちゃん、いい笑顔で話してたもんねぇ」 
 疑問が清水に伝わったらしく、解説されてしまった。
「……ああ」

 入社時の発声訓練と笑顔づくりの賜物である。

 そして、灯里は社内表彰『笑顔で話しま賞』において常に上位三位に食い込んでいる。


 顔と声が連動する、笑顔で対応するとクレームが減るというコールセンター長の説はそれなりに立証されている。

 親切な対応や朗らかな声のオペレーターが顧客からデートに誘われたり見合いを誘われたりは割とある。
 ……ただし、それでクレームが減ったかは定かではないが。

「美咲ちゃんをオペレーターとしてプロだと思うところは、腹黒さが顔や声には出ないところよ」

「だったらお給料あげてよ」

 ひどいいぐさではあるが、誉めているならきちんと評価しててほしいと言えば、上司は口をひんまげた。

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