【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

兄からの電話3

 見られて困るわけではないが、そこで灯里と出会ったのだ。

 彼女はなぜか蒼人を凝視していた。

 蒼人も目をそらせない。
 なおも見つめてくる灯里の瞳に吸い込まれそうになった。
は気がつけば見知らぬ女性だったのに『車に乗せてくれ』と頼み込んでいた。

 あれから、彼女は自分の側にいてくれる。

 ――できれば、ずっと側に。
 我知らず蒼人が微笑みを浮かべていると、兄から衝撃的な言葉が飛び出した。

『彼女と、見合いするぞ』
「は? 誰が」

 一瞬、『お前に決まっているだろう』という返事が返ってくるのではないかと期待してしまった。 

『俺だ。正しくはシンデレラガールがUNNO海運の御曹司と見合いする、だな』

 灯里に関してはかなりファンタジーな脳みそになってしまったらしい蒼人は、兄の言葉に冷水を浴びせられたように感じた。

「っ、なんで兄貴が」

『彼女の素性はわりと簡単に知れたからな。見合いをセッティングするための理由づけに彼女の職場への視察を計画した』

 そんなこと、灯里は一言も言ってなかった。

「どうして、兄貴が彼女と見合いするんだ」

 弟の、自分の恋人と知りながら。
 事と次第によっては兄弟の縁を切る。

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