【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

俺のことを考えて8

 さっき、冷えてしまった心臓が、今度はとくとくと甘く動き出す。
 灯里はうん、とうなずいた。

 今度は灯里の服を蒼人が見繕ってくれる。 
 蒼人は予想通りセンスがよく、灯里が普段選ばないデザインのワンピースを選んでくれた。
 店員もお薦めしてくれたので、蒼人が選んでくれた服を買うことにした。

 すると、蒼人がカードを店員に渡してしまう。

「私、買うよ?」

 灯里が蒼人に声をかけたが、「だーめ」と断られた。

「ずっとリハビリに付き合ってくれてたろ。今日は俺が灯里に付き合う日」

 灯里は花が咲いたように笑った。
 足が疲れてきたので、小休止をする。

「「大丈夫? 足つらくない?」」

 同時に同じことを聞いてしまい、二人はぷ、と笑いあった。

「もう、殆ど大丈夫。後、もう一回くらい定期検診受けて、それから救難隊に戻るための体力検査を受けるかな」

 蒼人の言葉に、灯里の体の中に小さな冷たい石が宿る。

「それよりも」

 蒼人が灯里の足元を見下ろした。
 ペディキュアを塗られた小さな爪が見えるサンダル。
 少しヒールがある。
 じっと見られて、なんとなく身を捩りたくなる。

「足元まで綺麗にしてくれてるんだね」

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