【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

俺のことを考えて5

 あんなに黙々と食べるだけに集中して、ほかの女性陣からの会話をそっけなくスルーしてたのに?

 海保側のメンバーから話しかけられても、ぶっきらぼうだった。

 あんな態度の中で、沸々とお持ち帰りのアイディアを練っていたとは。

 騙された。

「当たり前だろ。灯里が知らんぷりするならともかく、また俺のことを凝視してたから」 

 ばれてた。

「ギョッとされてるわけでもない。ケアハウスの時みたいに俺しか目に入ってないみたいだったから、これは持ち帰るしかないって思ったよ」

 なんと。

「……もしかして、私。モーションかけまくってた?」

 清水にがっつきすぎないように!と注意されていたのに。

「まくってた。だから灯里の上司が、君を俺に一番近い席に座らせたんだろ」

 あああああ。
 灯里は頭を抱え込んでしゃがみたくなった。

 蒼人が灯里に触れた。
 眩しそうな目で灯里を見つめている。

「今日は綺麗で、ほんと惚れ直す」

 蒼人の顔が近づいてくる。

 灯里の耳から彼の呼吸音と自分の心臓の音以外、消えていく。
 数センチで唇が触れ合うというところで彼は止まった。
 町のざわめきが戻ってくる。

「ごめん。俺、舞い上がってるな」

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