【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

俺のことを考えて3

 つぶやいてみるものの、そんなに心配しているわけではない。

 ほかのコールセンターだと、天候や病気などでコールセンターが閉鎖する危機に備えて各地に分場しているところもあるらしい。
 
 しかし、鶴亀通販のコールセンターは一拠点で日本全国から電話を受け入れているため、常時百人は勤務している。

 シフト制だから、顔を知っていて話したりするのは数人程度。

 その数人には既に『お持ち帰り』されたことも、蒼人の顔も知られてる。
 見かけたら、かえってそっとしておいてくれるだろう。

「お待たせ!」

 声をかけられて灯里は目を見張った。
 短めに整えられた髪、シャツの下にカットソー、ローファーにチノパン。

 普段よりおしゃれな蒼人がいた。

 身長は百八十センチはないようだが、足が長いので実際は高く見える。
 精悍でありつつ甘いマスク。
 そして骨格をしっかりと覆っている筋肉が姿勢のよさに出る。

 真っ直ぐに立つのすら難しい人が多い中、蒼人は居るだけでカジュアルラインのファッション雑誌の撮影かと思わせるかっこよさがある。

 通りがかりの女性がちらちらと蒼人も盗み見しているし、灯里も勿論見惚れた。
 そして蒼人も。

「灯里、可愛い」

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