【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

蒼人一色の日々9

「けど、イタ電がもとで彼にお持ち帰りされたんだもんね、ロマンチックだよねー」

 一人がうっとりした表情で言ったら、こら、と清水が口を挟んできた。

「今回は不幸中の幸いだったのよ。美咲ちゃん、一歩間違えれば処罰ものだからね」

 じろりとにらみ回されて、皆ひょっと首をすくめる。

「イタ電がこれ以上増えたらコールセンターに正式にクレームが入る。下手したらうちのセンター、お取り潰しよ」

 それは困る。いくら少額とはいえ、メシの種だ。

「いーい、あんた達。今回のことを口外しちゃだめよ」

 清水に念を押されて、灯里含めメンバーがはぁーいといい返事をした。

「確かに。イタ電をしたら海保の人と付き合うことになりました、なんて広まったら、それこそイタ電が増えるもんね」

「お口にチャック、と」

 メンバーが上司の言葉に納得してつぶやく。

「そのための美咲ちゃんからのみかじめ料じゃなかっ、口止め料もらったんだから」

 清水は満足そうにうなずいた。

「そういうこと」
 
 さすが出来る上司は違う。 
 あらかじめ食べさせておけば、口封じはたやすい。
 灯里以外の女性陣が、はぁーいとお行儀よく答える。

 は、と灯里は我に帰った。
 間違いはたださねば。

「だから、決してイタズラのつもりじゃなくて」

 なのに皆の対応は塩対応。

「そんなことより」
「そんなことなんかい」

 ツッコミしつつ、普通の人だとそうだろうなと思う。

 

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