【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

連れ出したくて、付き合いたかった6

 合コンの話は一ヶ月も前から清水と彼の友人が調整してくれたものなので、一週間前に出会った男性が海保の職員だったからどうこうできるレベルではない。

 土日祝が定休日な職場と違い、不定期勤務のシフト制なので参加者を募った後に勤務を調整しなければならないのだ。

「わかった。最近、にわかの人に追いかけられること多くてさ」

 説明に納得してくれた海野は逆に頭を下げてくれた。

 灯里はホッとした。
 推しの人に、イタズラ電話にストーカーまで罪状をつけられてしまうと、かなりやるせない。

「で、美咲……さんが海保のファンってのはなんで?」

 海野はまた、真っ直ぐに灯里をみた。

 目ぢからの強い人だな、と思う。それに……かなりハンサムだ。

 今日はきちんと髪を整えて、ヒゲもあたっている。
 ポロシャツにソフトパンツとラフな格好ではあるが、甘めのマスクを日焼けと体の逞しさが合わさって、アイドルよりはアクション俳優の趣がある。

「あのね」

 灯里は唇を舐めた。

 どこまでなら、自分はパニックせずに話し終えられるだろうか。しばらく考え、やがて自分でも聞きにくいくらいの声で呟いた。

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