【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

連れ出したくて、付き合いたかった5

「海保のファンって聞いたけど、俺のことを後つけてたりしたの?」

 灯里はしばらくポカンとした。
 質問の内容を理解すると、ブンブン!と大きく手を振って否定した。

「……あの後、寝ちゃったし」

 運転疲れに大勢に施したメイク疲れ。

 加えて、ほどよい弛緩の時間は灯里を寝落ちさせてしまった。

 海野も特に帰る気がなかったのかアシが欲しかったのかはわからないが、眠ってしまったようである。
 延長後の終わりを告げるために再び啼った電話で、二人とも飛び起きたのだ。

 それから、なんともいたたまれない空気の中、海野を最寄駅まで送っておひらきとなった。
 ……彼とはそれっきりになったはず、だった。

「うん」

 一週間前のことをボソボソと呟けば、海野も思い出したのか心もち赤くなった。
 すると、ラブホという場所も相まって、生々しさが迫ってくる。互いに、視線を避けてしまう。

「寝ている間に私が身分証明書を探れるんだったら、貴方も同じでしょ」

 しかも男性が身分証明書を持っていたかは、レンタカーを借りるときに運転免許証を提示した灯里より確率が低いのだ。

 灯里の言葉にそうだったな、と海野はつぶやいた。

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