【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

連れ出したくて、付き合いたかった4

 海野は部屋の中へ入ると、初め灯里にソファを指し示した。

 しかし、彼が移動しようとするとテーブルがあり、車椅子では動きにくかったようだ。 
 どうしようと迷っているようだったので、灯里は『自分からベッドに座るなんてはしたないと思われるかな』と考えながら腰掛けた。

 海野はベッドのそばまで車椅子できたが、それ以上は近寄らなかった。

「まさか、再会すると思わなかった」

 海野が苦笑していた。
 怒っていたわけではないらしい。

 灯里はホッとすると同時に気が抜けた。思わず、ほうっと大きな息を吐き出した。
 海野は彼女を見た。

「ついでにイタズラ電話の人だとは」

 彼としては面白がっているようだが、灯里には針のムシロである。

「ほんとにごめんなさいっ!」

 灯里がまた頭を下げると冗談、と海野は手を降った。かえって、こんなところに入ってごめんと謝ってきた。

「車椅子だとね、意外とファミレスも喫茶店も入りにくくて」

 段差もあるし、大の男なのにスタッフとはいえ女性に手だすけしてもらうのが恥ずかしいのだという。

 だからか。
 あの夜の続きを誘われているのかと思ってしまった自分が恥ずかしい。

「けど、事情聴取はさせてもらう」

 海野は真っ直ぐに灯里を見つめた。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品