【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

合コン当日

「……っぁあ、アン!」

 悩ましい自分の声に灯里は起こされた。
 は、は、は。
 吐き出す息が甘ったるい。
 体が火照っている。

「……」

 灯里は思わず周りを見渡した。

 あまりにリアルな映像に、自分がいるのはあのラブホテルで傍らには車椅子の男性がいるのかと錯覚してしまう。

 どきどきと心臓がうるさい。
 さきほどまで見ていた淫らな夢に、体がとろけてしまっている。

 車椅子の男性との時間はそれほどにエロティックで刺激的だった。

 何度も確認して、ようやく自室だと納得する。
 もちろん、あの男性はいない。

「はぁぁ……」

 がっかりした。
 寂しさが一気に押し寄せてくる。

「これで一週間連続」

 あの男性と愛しあう夢を見ている。

「もしかして、あの人と過ごした時間自体が妄想?」

 車椅子の男性も、過ごした時間も、全て自分が創り出したものかもしれないと考えたりもする。

 しかし、夢ではない証拠に彼女の内腿には一週間前に残されたキスマークがあった。

 ということは、やはりあの時間は現実だった。

「現実のほうが性悪……」

 今まで付き合った人に秘所を口淫されたこともある。
 けれど、寝そべった男性の顔に上に跨るなどということは初めてだった。

 人の顔の上で啼いて腰を動かして。
 思い出しただけで赤面する。

「あの人、私のことすっごい軽い女だと思ったろうなぁ」

 会ったその日にベッドインしたことがないとは言わない。けれど、その後付き合ったので自分の中ではビッチな女、ぎりぎり一歩手前のつもりである。

 しかし先週のことは言い訳ができない。

「車椅子の男性を襲うなんて、どれだけ飢えてるんだと思われたよね」

 おそらく男性は、灯里に触発されただけなのだ。
 マイセルフヒストリー黒歴史ナンバーワンだ。

 ……だから、帰り道。ひたすら『無』であるよう徹した。

 しかし、あまりに刺激的だったので自分のなかの『女』がすっかり目覚めてしまい、毎夜体は繰り返し興奮を求めているのだろう。
 
 ノロノロと起き出し、バスルームへと向かう。

 体温より低めのシャワーを頭から浴びていると、ようやく体のほてりが冷めてきた。
 そろそろと足の合間を探れば、とろりと粘性のある液体の感覚がある。

 顧客から浴びたクレームを思い出しながら、快感を拾ってしまわないようひたすら秘処を洗い清める。

 バスタオルで体から水滴を取りながらハァァ……と盛大なため息をつく。
 やるせない。
 困った。
 まだ、体の中に快楽の熾火がある。
 注意を向ければあっという間に燃え上がる。

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