【電書化】運命のイタズラ電話に甘いおしおきを

水田歩

出会いはケアハウス7

『……言えなかったの』

 言えるほどの軽い感情ではなかった。

 灯里の表情をみてとった上司は、への字に口をひん曲げた挙句携帯を取り出してその場で友人に電話をしてくれた。

『むーちゃん!』

 灯里が手を組み合わせて清水を拝めば、上司は面倒くさそうに手を降った。

『ほだされたわけじゃないわ。ただ、陸に上がって干上がっているうえに男日照りの美咲ちゃんを哀れに思っただけだから!』

 言い方はアレだし乾ききっていることを二回も言われたが、しっかりとほだされてくれている。

『ただし! がっつくのは禁止よ、僕は友人を失いたくないからねっ』

 びし、と鼻の上を指された。
 こんなに友達甲斐のある人だったのか。初めて見直した。

『むーちゃん、友人って私のことだよね?』

 念のため、キラキラな瞳で上司に確認してみた。

『だ・れ・が! 違うわよ、海保のダチの方! 美咲ちゃんなんて、単なる部下だから!』  

 鼻の上を指でぐりぐり押されてしまう。

『えええええー』

 けれど憎まれ口を聞きながらも上司は、友人から返事が来るときちんとセッティングしてくれた。

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