僕が彼女に執着心を持った時
家族
ベッドでまどろみの中、私は右側を向いて、薫さんは左側を下にして抱きしめ合う。
薫さんとまたこうして抱き合えると思ってなかった。よかった。
薫さんの胸に顔を埋めると、彼の身体の匂いがして安心する。
「薫さんの匂い、安心します」
彼が呟くように言う。
「うん。僕も映子ちゃんの匂い嗅ぐと、安心する。またこうして抱きしめ合えて本当によかった。最悪、もう会えないかと思ってたから」
「私もです。薫さん、最近体調は大丈夫ですか?」
薫さんが私の鼻にキスをする。
「うん、大丈夫だよ。映子ちゃんと付き合ってから、あんまり発作もでてないし。映子ちゃんの事、僕が守らなきゃ、強くなりたい、って思ってから、心も強くなったかな?」
薫さんがおどけてみせた。
「無理しないでくださいね」
「ありがとう」
私が高校に在学中は、薫さんはたまに発作を起こしていたと記憶しているけれど、確かに付き合ってからは発作を起こしているところを見たことが無かった。
高校の時より一緒にいる時間が短いから、私が気付いてないだけかな? でも薫さん、確かに顔色も良いみたいだし。
何はともあれ無理だけはしないでほしい。
その日は家に帰るのが遅くなってしまった。22時を過ぎていた。運悪く父が帰宅済みで、お説教をされてしまった。
薫さんと仲直りできたから、ちちのお説教も心して聴けた。
お父さんは私に付き合っている人が居ると言ったら、腰を抜かすかも。で、すごい剣幕で怒りそう。どこのどいつだー! って。
お母さんは……、薄々感づいてそう。お父さんには黙っててくれてるみたいだけれど。
15分のお説教が終わってお父さんが2階の寝室に上がると、お母さんがキッチンから居間に2つのお茶を持ってきてくれる。
「ありがとう」
お茶をすすっていると、お母さんが口を開く。
「彼氏とは、仲直りできたの?」
その言葉にぎょっとする。お母さん、やっぱり気付いてたんだ。
観念する。
「うん、できた」
「そう。よかったわね。もしかして、彼氏って、高校の時の美術の先生?」
「あっっっつ!!!」
びっくりしてお茶を一気に飲み込み過ぎてしまった。
「ふふふ。映子は本当にわかりやすいわねえ。
あなた、高校時代、美術の先生の話、よくしてたじゃない? 恋してる顔だった。
でも、卒業してからもその先生の話をしてて、パパは過去に先生と話した事だと思ってたみたいだけど、ママは気付いてた。あ、この子、先生と会ってるなって。
ずっと、帰る時間も遅くならないように、気を遣ってくれてたのね。いい人じゃないの。きちんと送り迎えしてくれてるみたいだったし。あ、ママね、こっそり見たことあるの。あなたが先生の車から降りるところ。カッコいい人ね。まあ、あれなら惚れちゃうのも解るわ。ふふ」
お母さん、そんな前から気づいてたんだ。母親、侮りがたし。
思わず面を喰らっている表情を浮かべてしまう私に、お母さんは続ける。
「でも、ここ1か月、映子、元気なかったじゃない? 最初は、仕事で何かあったのかな? と思ったけど、前はしょっちゅう出かけてたのに、仕事から真っすぐ帰ってくることが多くなって。これは、もしかしたら別れちゃったかもな、って思ってた。でも、仲直りできてよかったわね。
お母さんは、原元先生、賛成だな。
でも、お父さんは、今まで自分が早く帰宅できる時は必ず映子がご飯作ってくれてたのに、彼氏に夢中で、今日はお父さん、家族ラインに早く帰るって入れたのに、映子が遅く帰ってきて、さみしかったんじゃないかな。お父さんのことも、忘れないでやってね」
お母さんが微笑んだ。
「うん、わかった」
薫さんとまたこうして抱き合えると思ってなかった。よかった。
薫さんの胸に顔を埋めると、彼の身体の匂いがして安心する。
「薫さんの匂い、安心します」
彼が呟くように言う。
「うん。僕も映子ちゃんの匂い嗅ぐと、安心する。またこうして抱きしめ合えて本当によかった。最悪、もう会えないかと思ってたから」
「私もです。薫さん、最近体調は大丈夫ですか?」
薫さんが私の鼻にキスをする。
「うん、大丈夫だよ。映子ちゃんと付き合ってから、あんまり発作もでてないし。映子ちゃんの事、僕が守らなきゃ、強くなりたい、って思ってから、心も強くなったかな?」
薫さんがおどけてみせた。
「無理しないでくださいね」
「ありがとう」
私が高校に在学中は、薫さんはたまに発作を起こしていたと記憶しているけれど、確かに付き合ってからは発作を起こしているところを見たことが無かった。
高校の時より一緒にいる時間が短いから、私が気付いてないだけかな? でも薫さん、確かに顔色も良いみたいだし。
何はともあれ無理だけはしないでほしい。
その日は家に帰るのが遅くなってしまった。22時を過ぎていた。運悪く父が帰宅済みで、お説教をされてしまった。
薫さんと仲直りできたから、ちちのお説教も心して聴けた。
お父さんは私に付き合っている人が居ると言ったら、腰を抜かすかも。で、すごい剣幕で怒りそう。どこのどいつだー! って。
お母さんは……、薄々感づいてそう。お父さんには黙っててくれてるみたいだけれど。
15分のお説教が終わってお父さんが2階の寝室に上がると、お母さんがキッチンから居間に2つのお茶を持ってきてくれる。
「ありがとう」
お茶をすすっていると、お母さんが口を開く。
「彼氏とは、仲直りできたの?」
その言葉にぎょっとする。お母さん、やっぱり気付いてたんだ。
観念する。
「うん、できた」
「そう。よかったわね。もしかして、彼氏って、高校の時の美術の先生?」
「あっっっつ!!!」
びっくりしてお茶を一気に飲み込み過ぎてしまった。
「ふふふ。映子は本当にわかりやすいわねえ。
あなた、高校時代、美術の先生の話、よくしてたじゃない? 恋してる顔だった。
でも、卒業してからもその先生の話をしてて、パパは過去に先生と話した事だと思ってたみたいだけど、ママは気付いてた。あ、この子、先生と会ってるなって。
ずっと、帰る時間も遅くならないように、気を遣ってくれてたのね。いい人じゃないの。きちんと送り迎えしてくれてるみたいだったし。あ、ママね、こっそり見たことあるの。あなたが先生の車から降りるところ。カッコいい人ね。まあ、あれなら惚れちゃうのも解るわ。ふふ」
お母さん、そんな前から気づいてたんだ。母親、侮りがたし。
思わず面を喰らっている表情を浮かべてしまう私に、お母さんは続ける。
「でも、ここ1か月、映子、元気なかったじゃない? 最初は、仕事で何かあったのかな? と思ったけど、前はしょっちゅう出かけてたのに、仕事から真っすぐ帰ってくることが多くなって。これは、もしかしたら別れちゃったかもな、って思ってた。でも、仲直りできてよかったわね。
お母さんは、原元先生、賛成だな。
でも、お父さんは、今まで自分が早く帰宅できる時は必ず映子がご飯作ってくれてたのに、彼氏に夢中で、今日はお父さん、家族ラインに早く帰るって入れたのに、映子が遅く帰ってきて、さみしかったんじゃないかな。お父さんのことも、忘れないでやってね」
お母さんが微笑んだ。
「うん、わかった」
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