僕が彼女に執着心を持った時

白河 てまり

愛情と執着

 僕たちは電車に揺られて帰った。
 車窓に映る景色は夜だから真っ暗で、たまに街灯と家々の灯りがポツポツと流れる。
 映子ちゃんは窓側の席で、隣の僕の肩に頭を乗せて、すやすやと眠っている。僕も、そっと彼女に身を委ねた。



 映子ちゃんが短大2年生になった時、進路希望を地元の百貨店に出すことになる。僕らのこの県には百貨店が3件あり、その全部に希望を出したそうだ。
 清水の話を聞いてから、彼女は仕事について真剣に考えている様子だ。モチベーションが上がったのだろう。よかった。

 そして、卒業を迎える前に、無事第一希望である百貨店から、内定が出た。
 彼女はとても喜んだ。僕も一緒になって喜び、お祝いをした。



 僕は、弱い人間だ。だから、僕には彼女がどうしても必要なのだ。
 彼女は僕の人生における、大切な宝物だから。
 こんな弱い僕でも、彼女が幸せになれるなら、なんだってしてやろうと思える。彼女を悲しませるものがあるとしたら、僕が全力で守ってやる。これって、愛してるってことだな。

 これから、社会に出て彼女は沢山の人たちと出会うだろう。中には僕なんかが太刀打ち出来ない素敵な男性も現れるかもしれない。
 僕はその度に不安に苛まれるだろう。それでも僕は、この手を絶対に離さない。例え何があっても、逃がさすつもりは無い。この気持ちに名を付けるならば、執着心と呼べるだろう。

 初めて彼女と出会った時から、彼女に惹かれていた。僕らは時間を共に過ごして、僕にとって大切な人は、この子なんだな、と実感している。

 それなりに恋愛もしてきたつもりだったけど、こんな気持ちにさせられたのは、彼女が初めてだった。

 もしも運命の人と言うものが本当にあるのならば、それは僕にとっては彼女だと思う。
 愛情と執着心、この二つは紙一重で、切り離せないものだと僕は思う。

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