僕が彼女に執着心を持った時

白河 てまり

電話

 「18歳の女の子に手懐けられるアラサー男か……。」
 清水が感慨深そうに電話口で言った。
「その後、映子ちゃんがハンバーグとサラダ、スープ作ってくれて食べたよ。すごく美味しかった。あの子料理上手だわ。良いお嫁さんになりそう。それから、チョコレートケーキも食べて、ネクタイピンくれた。すごく嬉しかった!」
 僕は幸せのため息をついた。
「んで?」
「映子さん、から、映子ちゃん、て呼べるように了承してもらえた」
 僕は嬉々として話した。
「んで?」
「帰った」
 清水が間抜けな声を出す。
「え?」
 僕も間抜けな声で聞き返す。
「え?」
「なんもしなかったの?」
「うん」
 僕の返事に、清水が深いため息をつく。
「はあーーーーー。で? この電話は、残業続きで休日出勤後のお疲れな俺に、中学生のようなのろけ話を聞いてほしかったの?」
「あ、ごめんごめん。本題はそこじゃないんだ。
 映子ちゃん、短大卒業したら、商社に入社したいって言ってて……」
 僕の声のトーンが落ちた。
「ああ……そりゃあ薫としては心配だわな。」
 僕は恐る恐る聞いてみる。
「うん。でさ、今度、3人で飲まない? といっても、映子ちゃんはソフトドリンクだけど。清水から、商社の詳しい話、聞かせてやってくれないかな? 忙しかったら無理はしなくて大丈夫だけど」
「あ、うん、わかった。いいよ」
 清水はさらっと了承してくれた。

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