社長は身代わり婚約者を溺愛する
第25話 俺じゃダメ?①
その日の夕食。
お父さんが、私の方をチラチラと見ていた。
「どうしたの?お父さん。さっきから礼奈の方ばかり見て。」
お母さんがたまらなくなって、注意した。
「いやな。礼奈が男と別れたって言うから。」
「えっ いつ 」
お母さんもすごく驚いている。
「今日。」
「どうして 」
何だか、お母さんの方が食いつきがいい。
私は、この際だから本当の事を言おうと思った。
「私の彼氏、社長さんなの。」
「社長って……どうやって出会うんだ?」
「さあ?」
お父さんもお母さんも、そこから聞くんだ。
「芹香のお見合い、断ってって言われて行ったらいたのよ。」
「芹香ちゃんのお見合いに、あんたが行ったの?」
いちいち、驚くよね。お母さん。
「それで、いい雰囲気になって付き合ったんだけど、結局お嬢様じゃないとダメだって。」
「何だ!それは!」
お父さんが、箸を投げ捨てた。
「悪かったな!ウチは貧乏な工場経営で!」
「ちょっと、お父さん。」
私の代わりに怒ってくれるお父さんを、お母さんが抑える。
「それで?その事に礼奈は、納得したの?」
「するしかないよね。」
お母さんは、はぁーとため息をついた。
「どうして、しがみ付かなかったの?」
「しがみ付いてどうするの?」
「好きだったんでしょ。」
お母さんの言葉に、私の手が止まった。
「デートに行く礼奈の姿見てて思った。ああ、この子。今精一杯恋をしているんだって。」
思い返すと、デートに行く服を買いに行った事もあった。
「何だかお母さんまで、恋してるみたいな気がして、嬉しかったのよ。」
「それは、有難う。」
でも、その恋は終わってしまった。
結局私は、芹香に負けたのだ。
「ご馳走様。」
私は自分の食べたお皿を片付けた。
「ちょっと、外に出てきます。」
「今日は、どこに行くの?」
お母さんは、私がどこに出かけるのか、心配らしい。
「芹香とお茶。」
「こんな時に、芹香ちゃんと会うの?」
お母さんは、芹香のせいで私が信一郎さんと別れたと思っているらしい。
「芹香は、関係ないから。」
そう言って私は自分の家を出た。
そう。芹香のせいで、別れた訳じゃない。
私がずっと、芹香の真似をしていたのが悪かったのだ。
そう思うしかなかった。
芹香との待ち合わせは、いつものカフェにした。
「あっ、礼奈。」
何も知らない芹香は、いつもの笑顔だ。
「待たせてごめん。」
「ううん。私も今、来たところだし。」
そして、芹香が注文したコーヒーが運ばれてきた。
「私も、同じものをお願いします。」
「かしこまりました。」
店員さんが行った後、芹香は私に顔を近づけた。
「ねえ、黒崎さんとの事は、どうなってるの?」
頼んだコーヒーもまだ来ない。
私は、頬杖をついてため息交じりに伝えた。
「別れたの。」
「えっ 上手くいってたんじゃなかったの?」
どうやら、芹香の中ではそう思っていたらしい。
「私が、芹香じゃなくて、礼奈だってバレて。」
「それが、関係あるの?」
芹香、下沢さんと同じような事言ってる。
「要するに、沢井家のお嬢様じゃないと、ダメだって事。」
私は芹香をちらっと見た。
芹香は、うつむきながら考えている。
「……それって、ただ家柄で人を見ているって事?」
「そうだね。」
信一郎さんがそんな人じゃないって事は解っている。
「信一郎さんだって、家を裏切れないんだよ。」
「それにしても、礼奈の事、気に入ってたんだよね。」
「うん、まあ……」
あんなに、愛してるって言われたし。
「だったら、家柄よりも礼奈の事、取るべきだよ。」
私は、はぁーとため息をついた。
「芹香も同じ意見か。」
下沢君も同じ事を言っていた。
でも、信一郎さんは違った。
「もう、いいんだよ。振られたんだから。」
「礼奈……」
このタイミングで、頼んだコーヒーがやってきた。
「次の恋こそ、頑張るよ。」
芹香は、そっと微笑んだ。
「そう言えば、芹香の方は?」
芹香はコーヒーを飲むと、窓の外を見た。
「ダメだったみたい。」
「そうなの?」
「俺みたいなフリーターは、お嬢様に似合わないって。」
「……フリーターだったの?彼。」
「うん。」
私もコーヒーを一口飲んだ。
芹香の恋は、静かに終わったんだね。
私みたいに愛情がぶつかり合う事はあったんだろうか。
「芹香なら、また好きな人見つかるよ。」
「有難う。」
私達は微笑み合って、次の恋の話をした。
お父さんが、私の方をチラチラと見ていた。
「どうしたの?お父さん。さっきから礼奈の方ばかり見て。」
お母さんがたまらなくなって、注意した。
「いやな。礼奈が男と別れたって言うから。」
「えっ いつ 」
お母さんもすごく驚いている。
「今日。」
「どうして 」
何だか、お母さんの方が食いつきがいい。
私は、この際だから本当の事を言おうと思った。
「私の彼氏、社長さんなの。」
「社長って……どうやって出会うんだ?」
「さあ?」
お父さんもお母さんも、そこから聞くんだ。
「芹香のお見合い、断ってって言われて行ったらいたのよ。」
「芹香ちゃんのお見合いに、あんたが行ったの?」
いちいち、驚くよね。お母さん。
「それで、いい雰囲気になって付き合ったんだけど、結局お嬢様じゃないとダメだって。」
「何だ!それは!」
お父さんが、箸を投げ捨てた。
「悪かったな!ウチは貧乏な工場経営で!」
「ちょっと、お父さん。」
私の代わりに怒ってくれるお父さんを、お母さんが抑える。
「それで?その事に礼奈は、納得したの?」
「するしかないよね。」
お母さんは、はぁーとため息をついた。
「どうして、しがみ付かなかったの?」
「しがみ付いてどうするの?」
「好きだったんでしょ。」
お母さんの言葉に、私の手が止まった。
「デートに行く礼奈の姿見てて思った。ああ、この子。今精一杯恋をしているんだって。」
思い返すと、デートに行く服を買いに行った事もあった。
「何だかお母さんまで、恋してるみたいな気がして、嬉しかったのよ。」
「それは、有難う。」
でも、その恋は終わってしまった。
結局私は、芹香に負けたのだ。
「ご馳走様。」
私は自分の食べたお皿を片付けた。
「ちょっと、外に出てきます。」
「今日は、どこに行くの?」
お母さんは、私がどこに出かけるのか、心配らしい。
「芹香とお茶。」
「こんな時に、芹香ちゃんと会うの?」
お母さんは、芹香のせいで私が信一郎さんと別れたと思っているらしい。
「芹香は、関係ないから。」
そう言って私は自分の家を出た。
そう。芹香のせいで、別れた訳じゃない。
私がずっと、芹香の真似をしていたのが悪かったのだ。
そう思うしかなかった。
芹香との待ち合わせは、いつものカフェにした。
「あっ、礼奈。」
何も知らない芹香は、いつもの笑顔だ。
「待たせてごめん。」
「ううん。私も今、来たところだし。」
そして、芹香が注文したコーヒーが運ばれてきた。
「私も、同じものをお願いします。」
「かしこまりました。」
店員さんが行った後、芹香は私に顔を近づけた。
「ねえ、黒崎さんとの事は、どうなってるの?」
頼んだコーヒーもまだ来ない。
私は、頬杖をついてため息交じりに伝えた。
「別れたの。」
「えっ 上手くいってたんじゃなかったの?」
どうやら、芹香の中ではそう思っていたらしい。
「私が、芹香じゃなくて、礼奈だってバレて。」
「それが、関係あるの?」
芹香、下沢さんと同じような事言ってる。
「要するに、沢井家のお嬢様じゃないと、ダメだって事。」
私は芹香をちらっと見た。
芹香は、うつむきながら考えている。
「……それって、ただ家柄で人を見ているって事?」
「そうだね。」
信一郎さんがそんな人じゃないって事は解っている。
「信一郎さんだって、家を裏切れないんだよ。」
「それにしても、礼奈の事、気に入ってたんだよね。」
「うん、まあ……」
あんなに、愛してるって言われたし。
「だったら、家柄よりも礼奈の事、取るべきだよ。」
私は、はぁーとため息をついた。
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下沢君も同じ事を言っていた。
でも、信一郎さんは違った。
「もう、いいんだよ。振られたんだから。」
「礼奈……」
このタイミングで、頼んだコーヒーがやってきた。
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芹香は、そっと微笑んだ。
「そう言えば、芹香の方は?」
芹香はコーヒーを飲むと、窓の外を見た。
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私みたいに愛情がぶつかり合う事はあったんだろうか。
「芹香なら、また好きな人見つかるよ。」
「有難う。」
私達は微笑み合って、次の恋の話をした。
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