乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

162話 闇魔法

 イザベラが杖を取り出した。
 彼女の魔力に反応してか、先端の赤い宝石が輝き出す。
 闇の瘴気に汚染されてからのイザベラは、闇属性の魔法を得意としている。

「【影縫い】」

 イザベラの放った魔法により、アリシアの身体の自由は奪われた。

「うっ……なに、これ……!?」

「闇魔法の一種よ。対象の動きを止めることができるの。これであなたの動きを封じたわけ」

「そ、そんな……」

「ふふん、いい気味だわ。あなたにはお仕置きが必要よね……。たっぷりと可愛がってあげるから覚悟なさい!!」

 イザベラはアリシアに迫る。
 その様子を、一人の男子生徒が物陰から見ていた。
 フレッドだ。
 彼は愛しい姉の暴走を止めるのだろうか?
 否、止めることはない。
 では逆に、愛しい姉の暴走に加担するのだろうか?
 それも否である。
 彼の思惑は、別にある。

(全ては予定通り……。あの女の演技も上々か……。後は役者を揃えるだけだ)

 彼は邪悪な笑みを浮かべる。
 アリシアとフレッドは、共通の目的のために結託していた。
 イザベラとエドワード王子の婚約を何とかして破棄させるという目的である。

(ごめんなさい、姉上。でも、これしかないんです。僕と姉上が結ばれるためには……)

 イザベラとフレッドは義理の姉弟だが、直接の血縁関係はない。
 結婚は可能だ。
 ただし義理の姉弟であることも事実。
 貴族界において、義理の姉弟での婚姻などほとんど前例がない。
 彼が愛しい姉と結婚するためには、強引な手段を用いるしかないのだ。
 彼は気配を消したまま、イザベラとアリシアの様子を見守る。
 ちょうど、イザベラがアリシアを平手打ちしたところだった。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品