乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

125話 ”お姉ちゃん”と”親友”

 私はフレッドの説得に成功した。

「フレッド、少しそこで大人しく待っていてね」

「…………なぜ?」

「自分では気付いていないかもしれないけれど、あなたには闇の瘴気が取り憑いているの。このままだと大変なことになるわ。私なんかの光魔法じゃ祓いきれないから、アリシアさんを説得して、闇の瘴気を祓ってもらう必要があるのよ」

「……これが闇の瘴気? 抑圧されていた感情を増幅させるという、あの……」

「私も詳しくは知らないけれど。とにかく、大人しくしておいてね。あまり”お姉ちゃん”を困らせないでちょうだい」

「…………」

 フレッドは私の言う通りにしてくれた。
 私はフレッドをその場に残し、再びアリシアさんの方に向かう。
 しかし、すぐに立ち止まることになった。
 なぜなら、アリシアさんの方からこちらに歩いてきていたからだ。

「イザベラ様、フレッドさんとのお話は終わりましたか?」

「え、ええ、終わったわ」

 なんだろう?
 さっきよりも、アリシアさんから立ち上る闇の瘴気が増しているような……。
 私がフレッドと話しているこのわずかな時間で、いったい何があったのかしら?
 私はアリシアさんの表情を確認する。
 笑顔だ。
 でも、目が笑っていない。
 口元だけ弧を描いている感じだ。
 ……あれっ!?
 よく見ると、アリシアさんの目の下に隈ができていて、顔色も悪い!
 どう見ても普通じゃない。

「アリシアさん、どうかしたの? 体調が悪そうだけれど……」

「いえ、大丈夫です」

 アリシアさんはにっこりと微笑む。
 その様子は、一見するととても可愛らしく見える。
 だけど、アリシアさんが纏っている闇が、その印象を台無しにしていた。
 これは、やっぱりアリシアさんを何とかしないとダメだわ。
 私は決意を固める。

「アリシアさん、あなたには闇の瘴気に取り憑かれているわ。だから、今すぐ浄化してほしいの」

 私はストレートに要求を伝えた。

「闇の瘴気……?」

「ええ。その人が持つ負の感情や抑圧されていた思いを、増幅させてしまうらしいわ。この状態が続くと、アリシアさんの心が崩壊しかねないわ」

「抑圧されていた思い……」

 アリシアさんはうつろな目をしている。

「アリシアさん、お願い。あなた自身の光魔法で、あなたの中の闇を祓ってほしいのよ」

「……」

 アリシアさんは黙ったままだ。
 反応がない。
 聞こえていないのかしら?
 私はもう一度、アリシアさんに話しかける。

「ねえ、アリシアさん。”親友”としてあなたのことがとても心配なの。お願いよ、正気に戻っ……きゃあっ!」

 突然、アリシアさんが飛びかかってきた。
 私は慌てて避けようとする。
 だが、アリシアさんの方が動きが早かったようだ。
 私はアリシアさんに押し倒される形になってしまったのだった。

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