乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

115話 ファースト・キッス・ヒール

 カインの命の灯火が消えかかっている。
 その姿を見て、私はようやく決断をする。

「私の奥の手――特殊な回復魔法を使います。これで、カインを救うことができるはずですわ」

「特殊な回復魔法? イザベラ、貴様何を……?」

「イザベラ殿のことです。きっと、私達には想像もつかないような秘策をお持ちなのでしょう。さあ、早くお願いします」

 エドワード王子が怪しげに問う。
 それに続いて、オスカーも期待に満ちた声で促す。

「では――」

 私の全身を巡る魔力。
 それを、まずは上半身に集中させる。
 続いて首から上に。
 そして、口へと移動させていく。
 これは私の切り札の一つだ。
 普段は使えないし、使うつもりもなかったけれど。
 今回は仕方ない。
 このままだと、カインは死んでしまうから。

「【ファースト・キッス・ヒール】」

 私はカインの口に自分の口を近づけ、優しく触れ合うように重ねる。

「「な、何ぃいいっ!?」」

 エドワード王子とオスカーは、目を見開いて驚愕する。
 無理もない。
 こんな魔法、見たことも聞いたこともないだろう。
 そもそも、回復魔法を使う魔法使い自体珍しいしね。
 ましてや、キスをして発動する魔法なんて……。
 カインは目を見開きながらも、抵抗することなく静かに受け入れてくれた。
 しばらくすると、ゆっくりと傷が塞がっていく。

「い、イザベラ嬢……。これは一体……」

 無事に回復したカインが、そう問う。

「新しい回復魔法よ。粘膜同士から魔力を伝達することで、通常よりも効率的に治療ができるの」

「な、なるほど……?」

「しかも、今のは私のファーストキスなの! 乙女の初めてのキスを捧げるという条件付きで、さらなる治療効果の向上が期待できるってわけなのよ」

「イザベラ嬢のファーストキス!? そ、そんな貴重なものを俺に!? 良かったのか!?」

「もちろんよ。だって、私はカインのことをとても大切に思っているもの。命をかけて守ってくれたあなたを死なすことなんてできない。だから、この魔法を使ったの。まあ、私が勝手にやったことだから、気にしないで」

 私は、あまり意識していないように振る舞って、そう言う。
 だって、意識しちゃったら顔が赤くなって恥ずかしいし……。

「気にするなって言ってもよ……。侯爵家のイザベラ嬢のファーストキスともなれば、とてつもなく大きな意味が……」

「だから、気にしないでってば!」

 カインの言う通り、貴族家令嬢の私がキスをしたともなれば、その意味は大きい。
 結婚前の淑女にとって、初めての接吻はとても大切なものだから。
 この話が広まれば、私に縁談の話が来る可能性はかなり低くなるだろう。
 バッドエンドの回避にも、悪影響があるかもしれない。
 なるべく事を大きくしないでほしいのだけれど……。

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