乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?
106話 黒いモヤ
私がフレッドのキスを問い詰めていたところ、雷の轟音が轟いた。
いつの間にか、空は暗くなっている。
これは、間もなくかなり激しい雷雨になりそうだ。
「マズいわね。帰りましょうか、フレッド」
「……はい」
思わぬ天気の急変。
私はこれ幸いとばかりに、帰る口実にしてしまった。
フレッドと視線も合わさないまま、帰り道へと歩き出す。
だが、すぐに私は立ち止まった。
フレッドがついて来ていないからだ。
「フレッド? 早く行きましょ……!?」
振り向くと、そこにいるはずのフレッドの姿はなかった。
いや、フレッドは確かにそこに立っている。
しかし、彼の目からは黒いモヤのようなものが溢れ出していた。
その目は虚ろだ。
明らかに様子がおかしかった。
「フ、フレッド……?」
恐るおそる声をかけると、ゆっくりとこちらを振り向いた。
「………………」
フレッドは何も言わない。
ただ、じっと私を見ている。
「ねぇ、フレッド。どうかしたの?」
「…………」
「フレッドったら……きゃっ!」
返事がないフレッドを心配して近づいた瞬間、私は腕を掴まれてしまった。
そのまま引き寄せられる。
「ちょっと、フレッド。どうしたのよ?」
私はフレッドの腕の中でジタバタと暴れた。
だが、ビクともしない。
『覇気』を使わない素の身体能力では、彼の方がすっかり力が強くなっていた。
「もう、離しなさいよ。冗談にしては悪趣味だわ」
「……」
やはり、フレッドは何の反応も示さない。
「ねぇ、フレッド。ふざけるのはやめてよ」
私は必死に訴える。
フレッドは相変わらず無言だ。
「お願いだから、何か言ってちょうだい。黙っていたらわからないわ。一体、何がしたいの?」
私は不安になって尋ねる。
すると、ようやくフレッドが口を開いた。
「……」
「え?」
よく聞き取れなかったので、私は耳を澄ませる。
すると――
「そこまでだ! 悪党め!!」
「俺のイザベラ嬢にいったい何をしてやがる!」
「私の氷魔法で凍らせてあげ――。って、フレッド殿!?」
聞き慣れた声が次々と耳に入ってくる。
顔を上げると、そこにはエドワード殿下、カイン、オスカーがいた。
彼らは今にも攻撃を放ちそうな体勢で、私達に向かって叫んでいた。
「エドワード殿下、カイン、オスカー様……」
私は安堵の声を漏らす。
フレッドは三人の登場に驚いたのか、腕を緩めた。
私は慌ててフレッドから離れる。
「大丈夫か? 遅くなってすまなかった」
「無事そうで良かったぜ」
「それにしても、これはいったいどういうことですか? ご説明いただきたい、フレッド殿」
三人は、フレッドを問い詰め始めたのだった。
いつの間にか、空は暗くなっている。
これは、間もなくかなり激しい雷雨になりそうだ。
「マズいわね。帰りましょうか、フレッド」
「……はい」
思わぬ天気の急変。
私はこれ幸いとばかりに、帰る口実にしてしまった。
フレッドと視線も合わさないまま、帰り道へと歩き出す。
だが、すぐに私は立ち止まった。
フレッドがついて来ていないからだ。
「フレッド? 早く行きましょ……!?」
振り向くと、そこにいるはずのフレッドの姿はなかった。
いや、フレッドは確かにそこに立っている。
しかし、彼の目からは黒いモヤのようなものが溢れ出していた。
その目は虚ろだ。
明らかに様子がおかしかった。
「フ、フレッド……?」
恐るおそる声をかけると、ゆっくりとこちらを振り向いた。
「………………」
フレッドは何も言わない。
ただ、じっと私を見ている。
「ねぇ、フレッド。どうかしたの?」
「…………」
「フレッドったら……きゃっ!」
返事がないフレッドを心配して近づいた瞬間、私は腕を掴まれてしまった。
そのまま引き寄せられる。
「ちょっと、フレッド。どうしたのよ?」
私はフレッドの腕の中でジタバタと暴れた。
だが、ビクともしない。
『覇気』を使わない素の身体能力では、彼の方がすっかり力が強くなっていた。
「もう、離しなさいよ。冗談にしては悪趣味だわ」
「……」
やはり、フレッドは何の反応も示さない。
「ねぇ、フレッド。ふざけるのはやめてよ」
私は必死に訴える。
フレッドは相変わらず無言だ。
「お願いだから、何か言ってちょうだい。黙っていたらわからないわ。一体、何がしたいの?」
私は不安になって尋ねる。
すると、ようやくフレッドが口を開いた。
「……」
「え?」
よく聞き取れなかったので、私は耳を澄ませる。
すると――
「そこまでだ! 悪党め!!」
「俺のイザベラ嬢にいったい何をしてやがる!」
「私の氷魔法で凍らせてあげ――。って、フレッド殿!?」
聞き慣れた声が次々と耳に入ってくる。
顔を上げると、そこにはエドワード殿下、カイン、オスカーがいた。
彼らは今にも攻撃を放ちそうな体勢で、私達に向かって叫んでいた。
「エドワード殿下、カイン、オスカー様……」
私は安堵の声を漏らす。
フレッドは三人の登場に驚いたのか、腕を緩めた。
私は慌ててフレッドから離れる。
「大丈夫か? 遅くなってすまなかった」
「無事そうで良かったぜ」
「それにしても、これはいったいどういうことですか? ご説明いただきたい、フレッド殿」
三人は、フレッドを問い詰め始めたのだった。
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