乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

105話 素数を数えろ

 ダンスが終わった後、フレッドから突然キスされてしまった。
 このダンスで私のことを諦めてくれるものだと油断していた私は、完全に不意打ちを食らってしまった形になる。

「………………」

 私は混乱してしまっている頭を必死に回転させる。
 どうすればいいのかを考える。

(落ち着け……落ち着くんだ……)

 自分に言い聞かせる。
 ここで動揺してしまったら、バッドエンド一直線である。

(素数を数えろ……。2、3、5、7、11、13、17……)

 私は思考を切り替えた。
 とりあえず、まずは深呼吸をしよう。
 スーッハー、ス―ーッハァー。
 ヒッヒッフー。ヒッヒッフー。
 よし、これで落ち着いたぞ。
 私は完璧に落ち着きを取り戻すことに成功した。
 さて、ここからが本番だ。

「ど、どどど、どうして……」

 私は震え声で尋ねる。
 いかん。
 まだ動揺してしまっている。

「どうして、突然キスしてきたの? 私達は姉弟なのよ?」

 この世界にも、親愛のキスはある。
 だが、せいぜい10歳になるまでにするものだ。
 年頃の男女で行うようなものではない。
 すると、フレッドは悲しげな顔で答える。

「イザベラさんは僕のことが嫌いですか?」

「そ、そういうわけじゃなくて、姉弟なのよ。家族なのよ」

「でも、愛し合えないわけではないでしょう?」

「それは……」

 私は口ごもる。
 確かに、フレッドのことは好きだ。
 恋愛的な意味ではないが、人間的に好ましいと思っている。
 弟としては大切に思っている。

「イザベラさんには、まだ婚約者はいませんよね?」

「いないけど……それが何か関係があるの?」

「僕と結婚してください!」

 フレッドは叫ぶように言った。

「……はい?」

 一瞬、何を言われたか、わからなかった。

「聞こえませんでしたか? 結婚してくだ――」

「いえ、ちゃんと聞こえていたわ」

 私は慌てて止める。
 聞き間違いではなかったようだ。

「つまり、私にプロポーズしたということよね?」

「はい」

 おかしい。
 どうしてこんなことになっている?
 すっぱり諦めてくれると思っていたフレッドが、諦めてくれなかった。
 百歩譲って、それはいい。
 私の見立てが甘かっただけだ。

(でも、いきなりキスをした上に、プロポーズまでしてくるなんて、絶対におかしいわ)

 私はフレッドを見つめる。
 彼は真剣な表情をしていた。
 本気らしい。

「あのね、フレッド……」

 私が何とか言葉を絞り出そうとしたときだった。
 ピシャッ!
 ゴロゴロロ……ドーン!!
 轟音が周囲に轟いた。

(落雷かしら? こんなときに……)

 いつの間にか、空は暗くなっている。
 遠くの方では稲妻が見えていたのだった。

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