乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?
103話 覚えていますか?
私はフレッドと共にダンス会場にやって来た。
すでに多くの人で賑わっている。
「へえ~。去年よりも人が多い気がするわ」
私は感心していた。
昨年も人が少なかったわけではないが、今回ほど多くはなかった。
今年は何かあったのかしら?
私が疑問に思っていると、フレッドが説明してくれる。
「実は、今年の秋祭りには新たな目玉イベントが追加されたんです。そのせいもあって、例年以上に大勢の人が訪れているのでしょう」
「新たな目玉イベント?」
私は首を傾げる。
「はい。それは――」
フレッドが説明しかけたときだった。
「さあ、皆様!! 秋祭りもいよいよ大詰めです。ここで、最後の締めとなるダンスパーティーをお楽しみください」
司会者らしき人物が声を張り上げて呼びかけている。
私としては、あまり興味がないのだが、フレッドはそうではないらしい。
彼は目を輝かせていた。
「姉上……いえ、イザベラさん。僕と一緒に踊りませんか?」
フレッドが手を差し出し、緊張気味に誘いかけてきた。
先ほど一度返答しているのだが、こういう様式美だろう。
「もちろんよ。せっかくだし、一緒に踊りましょう」
私は笑顔で応じた。
フレッドと二人きりで踊るなんて、いつ以来だろうか?
小さい頃はよく踊っていたが、最近はそういう機会もなかった。
そんなことを考えながら、私はフレッドと手を繋ぎ、ダンスエリアの中央へ向かう。
「あら? この曲って……」
曲が始まり、私はすぐに気づいた。
この国では有名な恋歌だ。
恋人たちが愛を囁き合う内容の歌詞となっている。
フレッドは気づいているのかいないのか、特に反応を見せていない。
ただ真っ直ぐに前を向いていた。
私はフレッドの手を強く握り返し、ゆっくりとステップを踏み始める。
「イザベラさん。覚えていますか? 僕の母上を救ってくれた日のことを」
フレッドは穏やかな声で問いかけてくる。
「ええ。忘れるはずもないわ」
私の脳裏に蘇るのは、あの日の出来事。
私とフレッドが頑張って開発したポーションが、彼の母親の病に確かな効力を発揮したのだ。
自分の頑張りが実って、感動した記憶がある。
実の母が救われた彼の感動は、それ以上のものだっただろう。
その頃を境に、彼のシスコンっぷりは加速していったのだ。
「僕は、ずっと貴方に憧れていました。いつも優しく、聡明で、勇敢なイザベラ・アディントンに」
フレッドの言葉に嘘はない。
彼の瞳を見ればわかる。
ただのシスコンと侮っていたが、彼にはそれ以上の気持ちがある。
私は、ただ微笑み返したのだった。
すでに多くの人で賑わっている。
「へえ~。去年よりも人が多い気がするわ」
私は感心していた。
昨年も人が少なかったわけではないが、今回ほど多くはなかった。
今年は何かあったのかしら?
私が疑問に思っていると、フレッドが説明してくれる。
「実は、今年の秋祭りには新たな目玉イベントが追加されたんです。そのせいもあって、例年以上に大勢の人が訪れているのでしょう」
「新たな目玉イベント?」
私は首を傾げる。
「はい。それは――」
フレッドが説明しかけたときだった。
「さあ、皆様!! 秋祭りもいよいよ大詰めです。ここで、最後の締めとなるダンスパーティーをお楽しみください」
司会者らしき人物が声を張り上げて呼びかけている。
私としては、あまり興味がないのだが、フレッドはそうではないらしい。
彼は目を輝かせていた。
「姉上……いえ、イザベラさん。僕と一緒に踊りませんか?」
フレッドが手を差し出し、緊張気味に誘いかけてきた。
先ほど一度返答しているのだが、こういう様式美だろう。
「もちろんよ。せっかくだし、一緒に踊りましょう」
私は笑顔で応じた。
フレッドと二人きりで踊るなんて、いつ以来だろうか?
小さい頃はよく踊っていたが、最近はそういう機会もなかった。
そんなことを考えながら、私はフレッドと手を繋ぎ、ダンスエリアの中央へ向かう。
「あら? この曲って……」
曲が始まり、私はすぐに気づいた。
この国では有名な恋歌だ。
恋人たちが愛を囁き合う内容の歌詞となっている。
フレッドは気づいているのかいないのか、特に反応を見せていない。
ただ真っ直ぐに前を向いていた。
私はフレッドの手を強く握り返し、ゆっくりとステップを踏み始める。
「イザベラさん。覚えていますか? 僕の母上を救ってくれた日のことを」
フレッドは穏やかな声で問いかけてくる。
「ええ。忘れるはずもないわ」
私の脳裏に蘇るのは、あの日の出来事。
私とフレッドが頑張って開発したポーションが、彼の母親の病に確かな効力を発揮したのだ。
自分の頑張りが実って、感動した記憶がある。
実の母が救われた彼の感動は、それ以上のものだっただろう。
その頃を境に、彼のシスコンっぷりは加速していったのだ。
「僕は、ずっと貴方に憧れていました。いつも優しく、聡明で、勇敢なイザベラ・アディントンに」
フレッドの言葉に嘘はない。
彼の瞳を見ればわかる。
ただのシスコンと侮っていたが、彼にはそれ以上の気持ちがある。
私は、ただ微笑み返したのだった。
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