乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

102話 思い出を一つだけ

 ついに、フレッドから愛の告白を受けてしまった。
 今までにも何度か『好き』と言われてはいたのだが、『姉弟としての好きでしょ?』と、はぐらかしてきた。
 しかし、今回は違う。
 彼ははっきりと、一人の異性としての好意を伝えてくれたのだ。

(ど、どうしよう……。嬉しいけど、困るわ。だって、フレッドは義弟なんだもの)

 私は戸惑っていた。
 フレッドは義弟だからだ。
 血が繋がっていないとはいえ、私は彼の姉だ。
 この世界の倫理観的に考えて問題があると思う。

「姉上は僕のことを弟としか思っていないかもしれませんが、それでも構いません。僕の愛は本物です。あらゆる障害を乗り越えていく覚悟があります」

 フレッドは決意を込めた声で宣言した。

「……」

 私は言葉に詰まってしまう。
 だが、いつまでも黙り込んでいては駄目だと思い直す。
 きちんと返事をしないといけない。

「ごめんなさい。あなたの気持ちはとても嬉しいけれど、私はそういう目では見れないわ」

 私は正直に自分の想いを伝えた。

「そうですか……。残念です。姉上に嫌われたくなくて、ずっと我慢してきました。でも、やっぱり無理だったようですね……」

 フレッドは悲しげに呟く。

「本当にごめんなさい」

「いえ、いいんですよ。元々、望み薄なのはわかっていましたから。ただ、一度だけでも伝えたかったんです。それだけです」

「……」

 フレッドは吹っ切れた様子で笑った。

「僕が言いたいことは以上です。ですが最後に、思い出を一つだけ貰ってもよろしいでしょうか?」

「え? えっと、それはどういう意味かしら?」

 私は戸惑いながら聞き返す。

「そのままの意味です。今夜、僕とダンスを踊っていただけないでしょうか?」

 フレッドは躊躇なく要求を口にする。

「ダンス? ああ、秋祭りの終わりに踊るあれのことね」

 私は少し考え込む。
 異性とのダンスは、それなりに特別な意味を持つ。
 ……が、だからと言って即結婚に結びついたりはしない。
 各貴族が主催する夜会では、社交上の付き合いとして適当な異性と踊ることはよくある。
 それに、昨年の秋祭りでは私とオスカーが踊ったが、あれで劇的に関係が進んだなんてこともない。

「……わかった。あなたにエスコートを任せるわ」

 私は承諾することにした。

「ありがとうございます!」

 フレッドは嬉しそうな顔で礼を言う。

(……あれ? だれかの存在を忘れているような……)

 よく思い出せない。
 お酒を飲んで酔っ払ってしまっていたから?
 ううん、それもあるのだろうけど、なんだか頭に黒いモヤがかかったような感じがする。

「姉上! そうと決まれば、さっそく会場に向かいましょう!!」

「え? ああ、うん……」

 私はフレッドに急かされて、秋祭りの休憩場からダンス会場へ向けて歩き始めたのだった。

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