乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

76話 錬金の授業

「錬金の授業はここだったわね……」

 錬金術の実習室に着くと、既にほとんどの生徒が来ていた。
 その中には私の義弟フレッドの姿もあった。
 午後の授業は選択性で、学年が違う生徒と一緒になることもあるのだ。

「フレッド」

「姉上! こんにちは。授業が始まるまでもう少し時間があるから、今のうちに準備しておきましょう」

「ええ、そうね」

 私たちが材料の準備をしていると、錬金の先生がやってきた。

「やあやあ、皆さん。今日は調合の授業だよ。調合には危険が伴うから、十分注意するように」

 先生はいつものように穏やかな笑みを浮かべながら言った。

「ねえ、フレッド。この薬草ってどのタイミングで使うのかしら?」

「それはですね……」

 私が質問すると、彼は丁寧に答えてくれた。
 相変わらず、教え方が丁寧で分かりやすい。

(私は『ドララ』の知識のおかげで大体分かるし、分からないところはフレッドに聞けばいいから、本当に助かる)

 私は調合に集中することにした。
 しかし、隣にいるフレッドは集中できていないようだ。
 チラッチラッとこちらを見てくる。

「……どうしたのよ。そんなに見てきて。何か用事でもあるの?」

「いや、その……」

 フレッドは顔を赤くしながら口ごもる。

「だから何よ。はっきり言いなさいよ」

「……姉上、今日の服似合ってますね」

「なっ!? 急に何を言っているのよ!」

 私は動揺してしまった。
 だって、いきなりこんなことを言われるとは思わなかったんだもの!

「あの、姉上は僕のこと嫌いですか?」

「別に、そういうわけではないわ」

「なら、良かったです。僕は姉上のことが大好きですから」

「そ、そうなのね。ありがとう」

 こんなところで何を言い出すのか。
 血が繋がっていないとはいえ、フレッドは私の弟。
 学園内に変な噂が広まったらマズい。
 まあ、『ドララ』の攻略対象だけあって順調にイケメンに育っているので、悪い気はしないのだけれど……。

「いえ、本当のことですから」

「……」

「……」

 気まずくなってきた。
 このままだと沈黙が続きそうだ。

「そういえば、フレッドは何故錬金術を選んだの?」

 私は話題を変えるために、フレッドに尋ねた。

「もちろん、姉上と同じクラスになるためですよ。それに、今後も姉上のお役に立つために、錬金の知識はあった方がいいですし……」

 錬金術というのは、簡単に言えば化学に近い学問だ。
 この世界には魔力というものがある。
 そのため、現代日本と比べると科学は発達していないが、代わりに魔法が発達している。
 例えば、ポーション作成。
 この世界でポーションを作るためには、薬草や鉱物を調合しなければならない。
 しかし、その工程の一部には魔力が関わってくる。
 火をおこしたり、水を用意したり、風を起こしたりと様々なことを魔法で行っているのだ。

「そう。ありがとう。なら、頑張って勉強しないとね」

「はい! 頑張ります!」

 こうして私達は、錬金の授業に集中したのだった。

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