乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

67話 ほいっと

「さあ、オスカー様の腰も癒えましたことですし、今度こそ帰りましょうか」

 私はそう切り出す。

「そうですね。行きましょう」

「魔獣の回収は、後で私の方から手配しておきますので」

 イザベラさんとオスカーがそう言う。

「いえ、その必要はないですよ?」

「何故です? イザベラ殿。氷漬けにしているので、他の魔獣が今すぐ血に惹き寄せられることはありませんが、このまま放置していてはいずれ溶けます。そうなれば、近隣で魔獣の被害が出てしまうかもしれません」

 オスカーがそう言う。
 その指摘は至極最もなことだ。
 魔獣を置いていくなら、そうなってしまうだろう。

「ほいっと」

 私は『覇気』を開放し、魔獣の死体を持ち上げる。
 氷漬けになっているので不潔ではないし、アリシアさんの光魔法で冷気も抑えられている。
 これなら、私が担いで運んでいけばいいだけだ。

「なっ!? バ、バカな……」

 オスカーが驚愕の声を上げる。

「はわわ……。やっぱりイザベラ様は最高ですぅ! こんなに力がお強いなんて!!」

 アリシアさんは目を輝かせていた。

「あの……。二人とも、どうかしました?」

 私は首を傾げる。

「どうしたもこうしたもありませんよ。イザベラ殿の身体能力は知っているつもりでしたが、まさかこれほどとは……」

「わたしもビックリしています……。魔力を体に流されているのでしょうか? 同じ女性でこんなに凄い力を持つ方がいるなんて」

 二人は呆然としていた。
 まぁ、無理もないかな?
 魔法を応用すれば、身体能力を向上することができる。
 さっきオスカーがやっていたようにね。
 でも、その効果は限定的だ。
 もっと身体能力を上げるためには、特殊な技術が必要になる。
 例えば『覇気』のように。
 でも、覇気の存在を知っている人は少ない。
 アリシアさんも、私の技術は魔法に類するものと思ったみたいだ。

「まあ、鍛えていますからね」

 わざわざ覇気を使って魔獣を担いだのは、ちょっと迂闊だったかな?
 別に命の危険があるわけでもないし、後で誰かに回収に来てもらえばよかったかもしれない。
 ま、別にこれはこれで悪くはないけど。
 いつまでも能力を隠しておけるわけでもない。
 いざという時に気兼ねなく使えるよう、適度に周知しておくのは悪いことじゃないはずだ。

「なるほど! さすがはイザベラ様! わたしも鍛えます!!」

 アリシアさんは、私が言ったことを素直に受け止めた。

「……そういうことにしておきましょうか。イザベラ殿は本当に不思議な方です」

 オスカーは苦笑しながら、そう呟いたのだった。

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