乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

61話 天剣斬・改

 魔獣と戦っている。
 なかなか厄介な相手だ。

「グルルアァッ!!!」

 奴の次の標的はアリシアさんだった。
 魔獣が鋭い視線を彼女に向ける。

「ひぃっ!」

 アリシアさんが怯えた声を出した。
 このままじゃ危ない。
 最近メキメキ実力を伸ばしているとはいえ、アリシアさんは実戦慣れしていないんだ。
 私やオスカーがフォローしないと……。

「グオオォオッ!!!」

 魔獣がアリシアさんに向かって走り出す。
 その時だった。

「せ、聖なる光よ。悪しき者の目を眩ませよ。【フラッシュ】!!」

 アリシアさんは咄嵯に魔法を使った。
 ピカッ!
 強烈な閃光が辺り一面に広がる。
 私は思わず手で顔を覆った。
 ドゴーン!!
 メキメキッ!!!
 魔獣は方向感覚を失い、木に激突したようだ。

「はあ、はあっ! な、何とかなりましたぁ……」

 アリシアさんが震える声でそう言う。

「素晴らしい目眩ましです! ……凍てつく冷気よ。我が敵を包み込め。【アイスプリズン】!」

 オスカーがすかさず魔法を唱えた。
 すると、魔獣の周りに巨大な氷の壁が現れ、奴を閉じ込めた。

「イザベラ殿! 今です!!」

「はい!」

 私は返事をして、魔獣に向けて駆け出した。
 そして覇気を開放し、剣を振り下ろす。

「はああぁっ! 【天剣斬・改】!!」

 ザシュッ!!!
 私は魔獣の首を一刀両断にした。
 首はゴロリと地面を転がっていく。
 やった……。
 討伐完了だ。
 ふう、一時はどうなるかと思ったけど、無事倒せてよかった。

「お疲れさまです、イザベラ殿。さすがの剣筋ですね」

 オスカーが声を掛けてきた。

「はい、なんとか倒すことができました」

 私は彼に言葉を返す。

「ふぅ……。もうダメだと思いました……。イザベラ様とオスカーさんがいてくれて本当に助かりました」

 アリシアさんもホッとした様子で言った。

「いいえ、アリシア殿の機転のお陰ですよ。おかげで攻撃のチャンスが生まれました。ありがとうございました」

「そうですね。アリシアさんの光魔法には助けられたわ」

 オスカーと私は、アリシアさんに感謝の言葉を述べる。

「そんな、わたしなんて大したことしてませんよぉ~」

 謙遜するアリシアさん。
 彼女は相変わらず、自分を過小評価する傾向にあるみたいだ。

「何を仰います。あなたのおかげで隙が生まれたのですから、もっと自信を持ってください」

「そうだよ、アリシアさん」

 私とオスカーは、アリシアさんに笑顔を向ける。

「は、はい。ありがとうございます」

 アリシアさんは頬を赤く染めながら、ぺこりと頭を下げたのだった。

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