乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?
56話 実地訓練の朝
今日は実地訓練の日だ。
「ふう……。さすが、八月だけあって暑いわねぇ……」
この世界の暦や四季は、だいたい日本と同じようなイメージだ。
『ドララ』が日本人向けに作られたゲームだからだろうか。
「それにしても、今回は随分と早くに集合場所に来たつもりだったのだけれど、もうほとんどの生徒が揃っているのね」
私は周囲を見渡しながらそんなことを口にした。
「そうですね。やはり、皆さん初めての実地訓練ということで緊張しているんでしょう」
「オスカー様もですか?」
「私はいつも通りですよ。シルフォード伯爵領にいた頃も、採取はしたことがありますから。カキ氷の味付けに使えるものがないかを探していまして」
「まあ、それは心強いですわ」
「いえいえ。むしろ、イザベラ殿の方が余裕があるんじゃありませんか?」
「あら、どうしてです?」
「だって、イザベラ殿は魔法の達人ではありませんか。それに、身のこなしも貴族の令嬢とは思えないほど優れています」
私は七歳の頃から、魔法の鍛錬に精を出していた。
畑で栽培した作物を利用して魔力回復のポーションをつくって、効率的に能力を伸ばせたと思う。
ゲームで得た知識もあったしね。
身体能力が高いと思われているのは、『覇気』という技術の影響だろう。
覇気を開放した時の私は、エドワード殿下やカインにも引けを取らない身体能力を発揮できる。
ただし、普段の私は普通の貴族令嬢だ。
畑仕事をしていた分、ほんの少しだけ筋力はあるかもしれないけれど、それだけである。
「はわわ。イザベラ様はやっぱりすごいですぅ」
いつの間にやら、アリシアさんも合流していたようだ。
「おはよう、アリシアさん」
「お、おはようございましゅ、イザベラしゃま」
…………噛んだ。
「だ、大丈夫?」
「…………はい。ちょっと、朝ごはんを食べ過ぎて、遅刻しそうになって……」
アリシアさんは恥ずかしそうにはにかむ。
「今日は、イザベラ様の足を引っ張らないように頑張ります!」
「うん、一緒にがんばろうね」
私達は互いに微笑み合う。
「アリシア殿。私もいますので、安心してください。今日はよろしくお願い致します」
オスカーが丁寧に挨拶をする。
「…………」
アリシアさんは無反応だ。
あれ?
人の挨拶を無視するような子じゃないんだけど……。
たまたま聞こえなかったのかな?
「アリシアさん?」
私が声を掛けると、アリシアさん渋々といった感じで視線をオスカーに向けた。
「……はい。こちらこそよろしくお願いします。オスカー様」
うーん。
二人の間に何かあったのかな?
何だかギスギスしている。
今までこんなことなかったような……。
いや、これまではそもそも、男性陣が現れたらアリシアさんはいつの間にか姿を消していたのだ。
こうして長時間行動を共にするのは初めてかもしれない。
「さあさあ、全員揃ったみたいだし、そろそろ出発しましょう! まずは東の森で薬草採取ですわ!」
私はパンっと手を叩いて声を上げる。
そして、オスカーとアリシアさんを先導するように歩き始めたのだった。
「ふう……。さすが、八月だけあって暑いわねぇ……」
この世界の暦や四季は、だいたい日本と同じようなイメージだ。
『ドララ』が日本人向けに作られたゲームだからだろうか。
「それにしても、今回は随分と早くに集合場所に来たつもりだったのだけれど、もうほとんどの生徒が揃っているのね」
私は周囲を見渡しながらそんなことを口にした。
「そうですね。やはり、皆さん初めての実地訓練ということで緊張しているんでしょう」
「オスカー様もですか?」
「私はいつも通りですよ。シルフォード伯爵領にいた頃も、採取はしたことがありますから。カキ氷の味付けに使えるものがないかを探していまして」
「まあ、それは心強いですわ」
「いえいえ。むしろ、イザベラ殿の方が余裕があるんじゃありませんか?」
「あら、どうしてです?」
「だって、イザベラ殿は魔法の達人ではありませんか。それに、身のこなしも貴族の令嬢とは思えないほど優れています」
私は七歳の頃から、魔法の鍛錬に精を出していた。
畑で栽培した作物を利用して魔力回復のポーションをつくって、効率的に能力を伸ばせたと思う。
ゲームで得た知識もあったしね。
身体能力が高いと思われているのは、『覇気』という技術の影響だろう。
覇気を開放した時の私は、エドワード殿下やカインにも引けを取らない身体能力を発揮できる。
ただし、普段の私は普通の貴族令嬢だ。
畑仕事をしていた分、ほんの少しだけ筋力はあるかもしれないけれど、それだけである。
「はわわ。イザベラ様はやっぱりすごいですぅ」
いつの間にやら、アリシアさんも合流していたようだ。
「おはよう、アリシアさん」
「お、おはようございましゅ、イザベラしゃま」
…………噛んだ。
「だ、大丈夫?」
「…………はい。ちょっと、朝ごはんを食べ過ぎて、遅刻しそうになって……」
アリシアさんは恥ずかしそうにはにかむ。
「今日は、イザベラ様の足を引っ張らないように頑張ります!」
「うん、一緒にがんばろうね」
私達は互いに微笑み合う。
「アリシア殿。私もいますので、安心してください。今日はよろしくお願い致します」
オスカーが丁寧に挨拶をする。
「…………」
アリシアさんは無反応だ。
あれ?
人の挨拶を無視するような子じゃないんだけど……。
たまたま聞こえなかったのかな?
「アリシアさん?」
私が声を掛けると、アリシアさん渋々といった感じで視線をオスカーに向けた。
「……はい。こちらこそよろしくお願いします。オスカー様」
うーん。
二人の間に何かあったのかな?
何だかギスギスしている。
今までこんなことなかったような……。
いや、これまではそもそも、男性陣が現れたらアリシアさんはいつの間にか姿を消していたのだ。
こうして長時間行動を共にするのは初めてかもしれない。
「さあさあ、全員揃ったみたいだし、そろそろ出発しましょう! まずは東の森で薬草採取ですわ!」
私はパンっと手を叩いて声を上げる。
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