乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?
48話 ダンス
「お待たせー」
私はお花摘みを終えて、大通りへと戻る。
「遅かったじゃないか。心配したぞ」
「その通りですね。カイン殿もいつの間にかいなくなっておりますし、何かあったのかと不安になりました」
エドワード殿下とオスカーがそう言って私達を出迎える。
「ふふっ。実は途中で変なお兄さん達に捕まってしまって、大変だったのです」
「本当か!? だ、大丈夫なのか!?」
エドワード殿下が血相を変えて詰め寄ってくる。
「はい、平気ですわ。カインに助けてもらいましたので」
私がそう言うと、エドワード殿下は悔しげに歯噛みをする。
「俺だって、俺だって鍛えているのに……。なぜ俺は、その場にいなかったのだ!」
「仕方ありませんよ、エドワード殿。付いていきたいのは山々でしたが、レディのお花摘みにゾロゾロと付き添うわけにはいきませんからね」
オスカーが爽やかな笑みを浮かべて言った。
「それもそうだが……。収まりがつかない! せめて、その不埒者を斬り捨てたかった!!」
「エドワード殿下ったら、大袈裟ですよ」
私は苦笑いする。
「それで、その後はどうなったのだ?」
「カインが倒してくれましたわ。今は向こうで説教しているはずです」
「なるほどな。俺のイザベラを狙った罰だ。俺からも一言注意しておかねばならん!」
エドワード殿下はそう言って、私が来た方向に走っていった。
残されたのは、私とオスカー。
思わず二人で顔を見合わせる。
「エドワード殿下は相変わらずですねぇ。落ち着きがないというか」
「いえいえ、普段のエドワード殿はとても落ち着いていらっしゃいますよ」
「そうでしょうか? 私にはとてもそのようには見えませんが……」
私は首を傾げる。
「ふふっ。では、そういうことにしておきましょうか」
オスカーは微笑むと、私に手を差し伸べてきた。
「さぁ、二人がいない間は私がエスコートしましょう。せっかくの秋祭りですからね。楽しまないと損ですよ」
「ええ。そうですね」
私は差し出された手を握り返すと、一緒に歩き出した。
屋台をいくつか見て回る。
そして……。
「あれ? この広場で何か催し物があるのでしょうか?」
私は、大きなステージの前に人が集まっていることに気づいた。
「ああ、ここはダンス会場になっているんですよ。毎年恒例で、今年もあるようです」
「へぇ、そうなんですね」
ステージ上にはドレス姿の女性達が並んでおり、男性陣が次々と名乗りを上げていた。
「皆さん、とても綺麗ですわね」
「そうでしょう? 特に真ん中にいる方は、王都でも有名な女優さんですからね」
「まあ、そうなんですね。私、あまり詳しくなくて……」
「いえいえ、お気になさらず。それよりも……」
オスカーは突然私の手を取り、引き寄せた。
「きゃあっ!?」
「私と踊っていただけませんか? イザベラ殿」
オスカーは顔を近づけてくる。
私は頬を染めた。
「ちょ、ちょっと待ってください! 私、こういう場で踊るのは初めてで……! ステップとかよくわからないですし……」
貴族主催の夜会ならまだしも、こういう祭りの類では踊ったことがない。
「大丈夫ですよ。リードしますので、それに身を任せてください。まずは一曲、お願いいたします」
「そ、そんなこと急に言われましても……」
「それとも、誰か意中の相手でもいるのですか? エドワード殿、もしくはカイン殿でしょうか?」
「いや、別にそういうわけではないのですけど……」
「ならば問題ないではありませんか。私も、あなたとのダンスを楽しみたいのです。どうか、お願いできませんか?」
オスカーは懇願するように見つめてきた。
……ずるいわ。
そんな風に言われたら断れないじゃない。
「わかりました。よろしくお願いします」
「ありがとうございます。それじゃあ、早速行きますよ」
オスカーは私を引き寄せると、踊り始めた。
最初はぎこちなかったが、徐々に慣れてきて、楽しくなってきた。
(それにしても、オスカーは本当に顔が整っているなあ)
眼鏡を掛けているせいもあってか、知的な雰囲気を感じさせる。
だが決して冷たい印象はなく、むしろ優しい雰囲気だ。
「どうしましたか?」
「いえ、何でもありませんわ」
私は慌てて首を振る。
いけない、ぼーっとしていた。
「ふふっ。もしかして、緊張していますか? 豪胆なイザベラ殿にしては珍しい」
「もうっ、からかわないでください!」
私は頬を膨らませる。
すると、オスカーはクスッと笑みを漏らした。
「すみません、つい。イザベラ殿が可愛らしいものですから」
「か、可愛いだなんて……」
私は恥ずかしくなって俯く。
そんな会話をしつつも、私達はダンスを楽しんでいく。
ふと、周囲がざわついているのが聞こえた。
「(見て……。あの二人、すごく息ぴったり)」
「(美男美女のカップルね……。素敵……)」
どうやら、注目を集めているようだ。
「なんだか注目されていますね」
「ええ、そのようですね。目立ってしまったのかもしれません」
「うぅ、それは困りましたわね……」
私は苦笑いを浮かべる。
「よろしいではありませんか。私は、イザベラ殿とこうして踊れて嬉しいです」
「オスカー様……」
「だから、もう少しこのままでいさせてください」
「……はい、喜んで」
それから私とオスカーは、しばらくの間ダンスを楽しんだのだった。
私はお花摘みを終えて、大通りへと戻る。
「遅かったじゃないか。心配したぞ」
「その通りですね。カイン殿もいつの間にかいなくなっておりますし、何かあったのかと不安になりました」
エドワード殿下とオスカーがそう言って私達を出迎える。
「ふふっ。実は途中で変なお兄さん達に捕まってしまって、大変だったのです」
「本当か!? だ、大丈夫なのか!?」
エドワード殿下が血相を変えて詰め寄ってくる。
「はい、平気ですわ。カインに助けてもらいましたので」
私がそう言うと、エドワード殿下は悔しげに歯噛みをする。
「俺だって、俺だって鍛えているのに……。なぜ俺は、その場にいなかったのだ!」
「仕方ありませんよ、エドワード殿。付いていきたいのは山々でしたが、レディのお花摘みにゾロゾロと付き添うわけにはいきませんからね」
オスカーが爽やかな笑みを浮かべて言った。
「それもそうだが……。収まりがつかない! せめて、その不埒者を斬り捨てたかった!!」
「エドワード殿下ったら、大袈裟ですよ」
私は苦笑いする。
「それで、その後はどうなったのだ?」
「カインが倒してくれましたわ。今は向こうで説教しているはずです」
「なるほどな。俺のイザベラを狙った罰だ。俺からも一言注意しておかねばならん!」
エドワード殿下はそう言って、私が来た方向に走っていった。
残されたのは、私とオスカー。
思わず二人で顔を見合わせる。
「エドワード殿下は相変わらずですねぇ。落ち着きがないというか」
「いえいえ、普段のエドワード殿はとても落ち着いていらっしゃいますよ」
「そうでしょうか? 私にはとてもそのようには見えませんが……」
私は首を傾げる。
「ふふっ。では、そういうことにしておきましょうか」
オスカーは微笑むと、私に手を差し伸べてきた。
「さぁ、二人がいない間は私がエスコートしましょう。せっかくの秋祭りですからね。楽しまないと損ですよ」
「ええ。そうですね」
私は差し出された手を握り返すと、一緒に歩き出した。
屋台をいくつか見て回る。
そして……。
「あれ? この広場で何か催し物があるのでしょうか?」
私は、大きなステージの前に人が集まっていることに気づいた。
「ああ、ここはダンス会場になっているんですよ。毎年恒例で、今年もあるようです」
「へぇ、そうなんですね」
ステージ上にはドレス姿の女性達が並んでおり、男性陣が次々と名乗りを上げていた。
「皆さん、とても綺麗ですわね」
「そうでしょう? 特に真ん中にいる方は、王都でも有名な女優さんですからね」
「まあ、そうなんですね。私、あまり詳しくなくて……」
「いえいえ、お気になさらず。それよりも……」
オスカーは突然私の手を取り、引き寄せた。
「きゃあっ!?」
「私と踊っていただけませんか? イザベラ殿」
オスカーは顔を近づけてくる。
私は頬を染めた。
「ちょ、ちょっと待ってください! 私、こういう場で踊るのは初めてで……! ステップとかよくわからないですし……」
貴族主催の夜会ならまだしも、こういう祭りの類では踊ったことがない。
「大丈夫ですよ。リードしますので、それに身を任せてください。まずは一曲、お願いいたします」
「そ、そんなこと急に言われましても……」
「それとも、誰か意中の相手でもいるのですか? エドワード殿、もしくはカイン殿でしょうか?」
「いや、別にそういうわけではないのですけど……」
「ならば問題ないではありませんか。私も、あなたとのダンスを楽しみたいのです。どうか、お願いできませんか?」
オスカーは懇願するように見つめてきた。
……ずるいわ。
そんな風に言われたら断れないじゃない。
「わかりました。よろしくお願いします」
「ありがとうございます。それじゃあ、早速行きますよ」
オスカーは私を引き寄せると、踊り始めた。
最初はぎこちなかったが、徐々に慣れてきて、楽しくなってきた。
(それにしても、オスカーは本当に顔が整っているなあ)
眼鏡を掛けているせいもあってか、知的な雰囲気を感じさせる。
だが決して冷たい印象はなく、むしろ優しい雰囲気だ。
「どうしましたか?」
「いえ、何でもありませんわ」
私は慌てて首を振る。
いけない、ぼーっとしていた。
「ふふっ。もしかして、緊張していますか? 豪胆なイザベラ殿にしては珍しい」
「もうっ、からかわないでください!」
私は頬を膨らませる。
すると、オスカーはクスッと笑みを漏らした。
「すみません、つい。イザベラ殿が可愛らしいものですから」
「か、可愛いだなんて……」
私は恥ずかしくなって俯く。
そんな会話をしつつも、私達はダンスを楽しんでいく。
ふと、周囲がざわついているのが聞こえた。
「(見て……。あの二人、すごく息ぴったり)」
「(美男美女のカップルね……。素敵……)」
どうやら、注目を集めているようだ。
「なんだか注目されていますね」
「ええ、そのようですね。目立ってしまったのかもしれません」
「うぅ、それは困りましたわね……」
私は苦笑いを浮かべる。
「よろしいではありませんか。私は、イザベラ殿とこうして踊れて嬉しいです」
「オスカー様……」
「だから、もう少しこのままでいさせてください」
「……はい、喜んで」
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