乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

30話 絶体絶命【エドワード視点】

「くそっ! くそぉっ!!」

 俺は剣を振るいながら悪態をつく。

「エドワード殿下! お逃げください!!」

「ぐっ! だが、お前達を置いて一人で逃げるわけには……」

「殿下のお命の方が大切です。……ぐあああぁっ!!」

 兵の一人が、ゴブリンの攻撃を受けて倒れる。
 なんなんだ、こいつらは!!
 俺は兵を引き連れ、ゴブリンの討伐に来ていた。
 場所は、王都外れにある小さな山だ。
 そこに巣くうゴブリン達を一掃するためである。
 最初は順調に進んでいた。
 ゴブリンは弱いモンスターだ。
 新米の兵士であっても十分に戦える相手である。
 だから、俺達は油断していたのだ。
 ゴブリンの群れを見つけ、これならすぐに終わるだろうと。
 そして、それが間違いであったことに気づく。
 なぜなら、そこにはゴブリンキングがいたからだ。
 ゴブリンキングは通常のゴブリンより遥かに強い。
 強さは個体によってまちまちだが、最低でもBランク以上の冒険者が数人で戦うような化け物なのだ。
 そんな奴がゴブリンを率いていた。
 その数は、ざっと数えたところで二十匹以上。
 とてもではないが、俺と俺の兵だけでは対処できない数だ。

(くそっ! 少しでもイザベラに相応しい男になろうとした結果がこれか……)

 俺は心の中で舌打ちする。
 この一年間、王立学園で勉学と鍛錬に励んだ。
 アディントン侯爵家の令嬢、イザベラに相応しい男となるためだ。
 あいつは『面白い』女だ。
 最初は興味本位で婚約を申し込んでやったのだが、やんわりと断りやがった。
 その後は王家から正式に打診しているにも関わらず、のらりくらりと躱し続けてやがる。
 次期国王の俺からの誘いに、一切の興味がないように見える。
 ならば、地位だけではなく能力や実績を積み上げるまで。
 そう考え、春季休暇を利用し、兵を連れて魔物退治に精を出していたのだが。
 それが裏目に出てしまった。
 まさかゴブリンキングと遭遇してしまうとは。
 完全に計算外だ。

(だが、俺はこんなところで死ぬわけにはいかない!)

 必ず生きて帰る。
 そのためにも、なんとか活路を見出さないと。

「お前ら、ここは俺が食い止める。お前らは先に撤退しろ!」

「なっ! 何を仰います!?」

「お前達がいては足手まといだと言っているんだ!」

「そんなことはありません! 我々は最後まで殿下をお守りします!」

「いいから行け! 王族の秘術を使って敵を殲滅する! 危険だから、早くここから離れるんだ!!」

 王族の魔法は強力だ。
 それは、王族にだけ伝わる特別な魔法。
 使用すれば、どんな強敵であろうとも倒すことができるだろう。
 だが、その分リスクがある。
 まず、発動難易度がずば抜けて高い。
 鍛錬を積んできた俺でも、成功するかどうか……。
 その上、無事に成功したとしても、威力が高すぎて周囲を巻き込んでしまうリスクもある。

「はああああぁっ!!」

 俺は剣に魔力を纏わせ、ゴブリンキングに向かって斬りかかる。
 ゴブリンキングは棍棒を振り上げ、それを受け止めた。
 重い一撃に手が痺れる。
 だが、耐えられないほどじゃない!

「はああっ!!」

 俺は連続で攻撃を叩き込む。

「グギャッ!!」

 ゴブリンキングは悲鳴を上げ、後ろに下がる。
 どうやら、今ので少しダメージが入ったようだ。
 このまま押し切る!

「今です殿下! 殿下だけでもお逃げください!」

「殿下に何かあれば、我らの恥ですぞ!」

 兵達がそんなことを言う。

「まだ逃げていなかったのか! 今から大技を使うと言ったろうが!! 巻き込まれたくなければさっさと離れろ!」

 そう怒鳴ると、ようやく兵達はその場を離れた。
 よし、これで邪魔者はいなくなった。

「はああぁぁぁぁぁ……」

 俺は剣を構え、精神を集中させる。
 全身に力が満ちていくのを感じる。
 これが王族に伝わる武技の一つ、『覇気』だ。
 使用者の力を大幅に強化してくれる技術。
 これを使えば、Aランクの冒険者を超える力を得ることができる。

「くらえっ! 【天剣斬】!!!」

 俺は全力の攻撃を繰り出す。
 それは、ゴブリンキングを真っ二つに切り裂く。
 ……はずだった。

「グギャ?」

 ゴブリンキングが首を傾げる。
 思ったよりもダメージが少なく、困惑しているのだろう。

(くそっ! 失敗か……)

 やはり、俺にはまだ早かったようだ。
 鍛錬が足りなかった。
 イザベラに相応しい男になろうと我武者羅に頑張ってきたのだが、届かなかった。

「ギャギャッ!」

 ゴブリンキングが棍棒を振り上げる。
 俺は死を覚悟した。
 その時だ。

「ゴブゥッ!?」

 突然、ゴブリンキングが吹き飛んだ。
 何が起きたのか理解できない。

「あら? やはりエドワード殿下でしたか。ご機嫌麗しゅう」

 混乱する俺に、そんな透き通るかのような美しい声が聞こえてきたのだった。

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